シャクティ教シュリー・クラ派の宇宙論 [中世インド]

「シュリー・クラ派」は、シャクティ教(ヒンドゥー教シャクティ派)の中で、最も古くその思想を体系化した派で、「シュリー・ヴィディヤー派」とも呼ばれます。
ハタ・ヨガ系経典とされる「シヴァ・サンヒター」はこの派に属します。
このページでは、同派の宇宙論を紹介します。

シュリー・クラ派は、「シャクティ」から展開した次の4側面のそれぞれが照応すると考えます。

・「対象からなるもの」  :36原理から展開されたマクロコスモス(世界)
・「語からなるもの」   :「最高の語」からの次の4段階で展開された言葉
・「チャクラからなるもの」:シュリー・チャクラなどのヤントラ
・「身体からなるもの」  :チャクラ、クンダリニーからなる人間の身体 
 
「語からなるもの」は、「最高の語」<「世界の青写真」<「展開中の不分明な世界」<「分節化された世界」という言語の4階層からなります。
ヴェーダーンタ哲学のバルトリハリの言語神秘主義哲学の影響を感じます。

この派の宇宙創造論として、2種類を紹介します。
まず、おそらく古いと思われるもの(下記表B)です。

最初に、ア字で象徴される「シヴァ」と、ハ字で象徴される「シャクティ」がいます。
次に、質料である「ビンドゥ」、音・言葉である「ナーダ」の2つ(この2つは一体で「複合ビンドゥ」とも呼ばれます)、そして、「白い男性の心滴」、「赤い女性の心滴」が生まれます。
この4者が合体して、「カーマ・カラー」という愛の力が生まれます。
これが、主神の「トリプラスンダリー」、あるいは「ラリター」です。

この女神は、「シヴァ」と「シャクティ」の合体であり、個性を持った存在で、「個我」はこの女神から生まれ、実体として展開されます。

次に、より精密な、36原理の展開による宇宙創造論(下記表A)です。
これは、基本的にカシミール・シヴァ派の宇宙論と同じです。
タントラの他派と同様に、サーンキヤ哲学の25原理の上に、有神論的な原理を置くものです。

まず、「シヴァ」と「シャクティ」の一体の存在があります。
そこから、「永遠のシヴァ」、「限定されない能力」、「限定されない知」の3原理が生まれます。
次に、「物質創造原理(マーヤー)」、「限定された能力(カラー)」、「限定された知(ヴィディヤー)」の3原理が生まれます。
次に、「特定の対象に対する執着(ラーガ)」、「時間(カーラ)」、「特定の業の影響を被る被限定者性(ニヤティ)」の3原理が生まれます。

以上で11原理です。
次の展開は、ほぼサーンキヤ25原理と同じです。



宇宙論の階層A 宇宙論の階層B
シヴァ/シャクティ シヴァ/シャクティ
永遠のシヴァ
限定されない能力
限定されない知
ビンドゥ
ナーダ
マーヤー
カラー
ヴィディヤー
白い男性の心滴
赤い女性の心滴
ラーガ
カーラ
ニヤティ
トリプラスンダリー
(カーマカラー)
サーンキヤ哲学25原理 サーンキヤ哲学25原理



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