南宗・北宗の内丹法 [中国]

現在まで伝わる内丹の基準となる行法は、「金丹派南宗」を始めた張伯端によって作られました。
この派の内丹法は、以降のほとんどすべての派に影響を与え、北宗の伍柳派は、内丹法を広く一般に分かりやすく公開しました。

この項では、両派の清修の内丹法を紹介します。


金丹派南宋は張伯端(987-1082)が開祖で、白玉蟾が大成しました。
張伯端は四川の成都で活動した人物で、「周易参同契」を受け継ぎ、鍾離権、呂洞賓を奉じています。
南宗の丹法は、「悟真篇」、「玉清金笥青華秘文金宝内煉丹訣」、「金丹四百字」、「張紫陽八脈経」などに記されています。

清代の伍守陽(1574-1644)、柳華陽(1736-)の2人が確立した内丹派を「伍柳派」と呼びます。
全真道の北宗の、丘処機の竜門派を源流としています。
その内丹法は、伍守陽の「天仙正理直論」、「仙仏合宗語録」、柳華陽の「慧命経」、「金仙証論」などに記されています。

南宗、北宗ともに、その内丹法は、「性命双修(精神と気の両方をコントロールする)」です。
ですが、南宗は「先命後性(先に気のコントロールをする)」で、北宗は「先性後命(先に精神のコントロールをする)」です。
そして、南宗は「陰陽双修派(性的な房中術=栽接法も行う)」ですが、北宗は出家の教団のため、房中術を行わない「清修派」です。

南宗、伍柳派ともに、その内丹法は、大きくは、「煉己築基(築基入手工夫)」、「煉精化気」、「煉気化神」、「煉神還虚」の4段階に分けられます。

この中で、行法の対象は、「後天の精・気・神」→「元精」→「元気」→「元神」→「虚」と変化させていきます。

先天の「元精」、「元気」、「元神」の数は、「三」→「二(元気+元神)」→「一(元神)」→「〇」と変化します。

また、「元精」、「元気」、「元神」を結びつけて凝縮したものは、「外薬(小薬)」→「内薬」→「大薬」→「聖胎」→「陽神」と変化させます。

以下、具体的に順を追って、行法を紹介します。


1 煉己築基

「煉己築基」では、後天の精・気・神を煉り、元気の減少を補充し、任脈・督脈を通します。

基本的に、内丹で煉る対象となるのは、先天の「精」・「気」・「神」(以下、元精・元気・元神)で、これは「薬」、「三宝」、「真種子」と呼ばれますが、この段階では、後天の「精」・「気」・「神」が薬となります。

まず、心を落ち着かせ、黄庭に集中して、「欲神」をなくし「元神」を現わします。
これを、「守竅煉心」、「煉己守竅」、「玄関一竅」などを呼びます。
心が落ち着いた瞑想状態は、潜在意識的な意識の状態で、「意」と表現され、これは神と気を結びつける「媒」であり、「黄婆」とも表現されます。

北宗の場合は、この「性功」、つまり、無心(虚)になる精神的な瞑想を重視します。
そのため、この段階を「煉心還虚」と表現することもあります。
「先命後性」と「先性後命」の違いは、この段階での精神的な瞑想の重視する度合いの違いです。

次に、腎臓にある「精」が「気」に変わると、これを任脈・督脈に沿って回し、三関を通します。

これを行っているうちに、黄庭に「元気」が生じると、この段階が完成します。


2 煉精化炁(初関・三を二に帰す)

「煉精化炁」は、「初関」とも呼ばれ、「三を二に帰す」と表現されます。
このでは、「元精」を煉って「炁(精と気を煉った混合物)」に変えます。
この段階の瞑想の場所は、下端の「炉」は下丹田、上端の「鼎(鍋)」は泥丸で、「大炉鼎」、「大河車」と表現されます。

「煉精化炁」は、大きく「外薬煉採」と「内薬採煉」の2段階から構成されます。 

2-1 外薬煉採

さらに、「外薬煉採」は、「調薬」、「採薬」、「煉薬」の3段階から構成されます。

2-1-1 調薬

下丹田(黄庭)に集中し、「元精」と「神火」(気を煉って熱を持ったもの)を混ぜると、「陽光一現(眼前に光が現れる)」という現象が現れて、温かい感覚と共に「元気」が生じます。
これが下丹田から命門(腎臓の中間)に上がると、「外薬(小薬)」と呼ばれるものになります。

2-1-2 採薬

「外薬」を下丹田に入れて、そこに意識をかけて「神」をこらし、凝縮します。

意識かけて「神」を融合することを「採る」と表現します。
「外薬」は「生じてから採る」、次の「内薬」は「採ってから生じる」と言います。

2-1-3 煉薬(小周天)

「外薬」をさらに煉っていくと、「元精」が「炁」に変わり、動き出します。
これを任脈・督脈に回して下丹田に蓄えます。
これを「小周天」と呼びます。

2-2 内薬採煉

300回ほど小周天を重ねて、「外薬」を凝縮、蓄積します。
すると、すべての「精」が「炁」に変わり、「陽光二現(眉間に水銀のような一筋の白い光が現れる)」という現象が現れます。

そこで、火(熱)を止めて、下丹田で「元神」と結合させていると、会陰から丹田に「炁」が昇り、「内薬」が生じます。


3 煉炁化神(中関・二を一に帰す)

「煉炁化神」は、「中関」とも呼ばれ、「二を一に帰す」と表現されます。
この段階では、「炁」を「神」と一つにして煉り、「聖胎」・「陽神」にします。
この段階の「炉」は下丹田、「鼎」は黄庭で、「小炉鼎」、「小河車」と表現されます。

「煉炁化神」は、「七日採工」と「十月大周天」の2段階から構成されます。

3-1 七日採工(採丹)

「七日採工」は「採丹」とも呼ばれ、さらに、「採大薬過関」と「移胎服食」の2段階から構成されます。

3-1-1 採大薬過関

蓄積されていた「外薬」と「内薬」を結合させていると、「陽光三現(部屋に白い光が立ち込める)」という現象が現れて、「炁」が黄庭に集まります。

七日ほど煉り続けると、「六根震動」という現象が現れ、「大薬」が下丹田に生じます。
「六根震動」は、丹田では火が激しく燃え、腎は沸騰したようになり、目からは金色の光が出て、耳の後ろでは風が起こり、頭の後ろでは鷲が鳴き、身は沸き立つようで、鼻がひきつけられる、という6つの現象を指します。

3-1-2 移胎服食

「大薬」は頭頂から尾骨まで動きますが、鼻孔や肛門から体外に漏れないようにし(漏れる時は液体状になります)、最終的に黄庭に落ち着かせて、「神」と一つにして煉ります。
すると、「大薬」は「聖胎(胎児、嬰児)」と呼ばれるものになります。

3-2 十月大周天(養胎)

精神を無心にして、「聖胎」を下丹田と黄庭の間に安定させます。
これを「大周天」と言います。
瞑想を続けていると、4-5カ月で「胎」の形が出来上がり、「神」が「霊胎」と一体になって「陽神」になります。
「炁」が「神」に変化したのです。

さらに続けていると、10ヶ月で、「胎(丹)」は完成し、体は純粋な陽の性質になります。
この過程を「養胎」と呼びます。


4 煉神還虚(上関・一を〇に帰す)

「煉神還虚」は「上関」とも呼ばれ、「一を〇に帰す」と表現されます。
この段階では、「陽神」を、「道」に一体化させ、「虚」に戻します。

「煉神還虚」は、「三年哺乳」と「六年温養」の2段階から構成されます。
「虚空粉砕」や「還虚合道」を別に数えることもあります。

4-1 三年哺乳(出胎)

「陽神」を上丹田に移し(移胎)、静かに意識をかけて強化することを、3年続けます。

すると、六通が完全になり、美しい景色が見えるようになります。
そして、天門(頭頂の門)が動き出し、骨と肉が離れるように、「陽神」が肉体から分かれます。
これを「出胎(出神)」と呼びます。

4-2 六年温養(虚空粉砕)

その後、頭頂から「陽神」を少しだけ体外に出して、また戻すことを、六年ほど続けます。
体の回りに金色の光が現れるので、この光を外に出した「陽神」の中に吸収し、「陽神」を体の中に戻します。

「陽神」を「虚」に戻すように煉っていると、光が放射されます。
さらに肉体を煉って「陽神」の中に溶け込ませ、光を照らすと、肉体は消失して「炁」になります。
これを「虚空粉砕」と呼びます。

こうして、「陽神」は「虚」に還り(還虚)、「道(タオ)」と一体化(合道)します。


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