黄金の夜明け団の位階システム [近代魔術]

「黄金の夜明け団(以下GD)」の位階システム、その入門儀式、そして、カリキュラムについてまとめます。
しっかりした運営が行われていたのは一時的だったのかもしれませんが、これらの位階システム、及び、その試験がしっかり整えられていた点が、GDの優れていた特徴です。


<位階>

GDの位階は、18Cのドイツの「黄金薔薇十字団」、「英国薔薇十字団」などの薔薇十字団の伝統を継承したものです。

位階は、次のように、セフィロートに対応する10の位階と、2つの「見習い」から構成されています。

(位階名)           (セフィロート)(対応象徴)
0=0  ニオファイト     
1=10 ジェレーター        :マルクト   :地(四大元素)
2=9  セオリカス        :イェソド   :空気・月
3=8  プラクティカス      :ネツァク   :水 ・水星
4=7  フィロソファス      :ホド     :火 ・金星
====
予備門             :パロケスのヴェイル(境界)
5=6  アデプタス・マイナー   :ティファレット:太陽
6=5  アデプタス・メジャー   :ゲプラー   :火星
7=4  アデプタス・イグゼンプタス:ケセド    :木星
====
8=3  マジスター・テンプリ   :コクマー   :土星
9=2  メイガス         :ビナー
10=1 イプシシマス       :ケケル

52895.JPG
*マグレガー・マサースによる手書きの生命の樹

そして、団は、「4=7 フィロソファス」までの「ファースト・オーダー(外陣)」と、「7=4 アデプタス・イグゼンプタス」までの「セカンド・オーダー(内陣)」と、それ以上の「サード・オーダー」の3つから構成されます。

「ファースト・オーダー」が狭義の「黄金の夜明け」であり、そのロンドン本部が「イシス・ウラニア・テンプルNo.3」です。
それぞれの位階は、四大元素が対応しているため、「元素位階」とも呼ばれます。
ただ、本来的には、地球(月下)であるマルクトに4大元素が対応します。

「セカンド・オーダー」は「ルビーの薔薇と金の十字架」と呼ばれます。
「サード・オーダー」は、ドイツの「秘密の首領」が構成している、とされました。

ウッドマン、ウェストコット、マサースの創設者3人は、外陣を率いる「5=6アデプタス・マイナー」であり、同時に、内陣を率いる「7=4アデプタス・イグゼンプタス」でしたが、それぞれの位階の魔術師名を持っていました。
また、「6=5アデプタス・メジャー」には、モイナ・マサース一人が就いていました。
そのため、一般の団員の実質の最上位階は、「5=6アデプタス・マイナー」でした。

支部を率いることができる「5=6 アデプタス・マイナー」の授与には甘い点をあったようですが、このように、位階の上限が厳しく守られていたことは、この手の魔術結社では極めて稀なことです。


<入門儀礼>

各位階を得るには、決められた知識の習得と、入門儀式(通過儀式)を受けることが必要です。
入門儀式の一般的な構造、特徴には、下記などがあります。

・対応する物語設定がある
・知識の試験と、誓約(秘密厳守、兄弟愛、邪悪な魔術の非行使など)が行われる
・対応する元素の霊や「光」などが召喚される
・対応するセフィラにつながるすべての小径を旅して、神格に出会うなどし、各小径に対応する大アルカナのカードを見る
・その位階(対応するセフィラ)の領域・神殿に入り、その象徴と意味が開示される

最初の見習いになるための「ニオファイト儀式」では、「光」が召喚されて、志願者のオーラに埋め込まれます。

「全体系はその目的を「光」の引き降ろしに置いている…0=0から5=6の間にある位階は、いわば光と闇の間に振動する「光」の解析に従事しているのであり…」とイスラエル・リガルディーが「GD」で書いているように、GDでは、神性が白く輝く「光」として召喚されます。

外陣の4つの「元素儀式」では、順に、四大元素が召喚され、志願者の内なるその力を目覚せようとします。
そして、「予備門儀式」では、第五元素である「霊」が召喚され、四大元素の均衡が求められます。

また、内陣の「5=6 アデプタス・マイナー儀式」でも、再度、「光」が召喚されます。

リガルディーは同書で、「アデプタス・マイナー儀礼の目的は、人格の救済を達成し、竜の力を再生し、個人に潜在的神性の認識をもたらすことにある」と書いています。
 また、GDの知識講義文書「アデプタス・マイナーに課される責務」には、「高次の意志が下降して低次の意志を従わせる」と書かれています。


以下、個々の入門儀礼の特徴です。

「ニオファイト(見習い)儀式」の物語は、「死者の書」におけるの魂の計量です。
ホルス役のアデプトが志願者をオシリスに紹介し、オシリスと一体化します。
そして、聖別、四大元素の聖餐などが行われます。

「地」の位階の「ジェレーター(熱意ある者)儀式」の物語は、「出エジプト記」の荒野の幕屋です。
志願者は、まず、「悪の小径」をサマエルに追い返され、次に「善の小径」を追い返され、最後に、「直線(均衡)の小径」を進んで祭壇に導かれます。

「空気」の位階の「セオリカス(傍観者)儀式」の物語は、地下世界の旅です。
小径「タウ」を旅して、4柱のケルビム、四大元素の天使と出会い浄化を受けます。

「水」の位階の「プラクティカス(実践者)儀式」の物語は、サモトラケの密儀です。
2つの小径を旅しますが、「シン」では、火の神格である3人のカビリと出会います。
そして、「追放以前のエデンの園」の開示を受けます。
この位階では、3ヶ月以上の滞在が必要とされます。

「火」の位階の「フィロソファス(叡智を愛するもの)儀式」の物語は、秩序と混沌の戦いです。
3つの小径を旅しますが、「コフ」では、水の元素を担うオシリス、ホルス、イシスと出会い、霊的進化、恐怖と幻想の克服を体験します。
「ツァディ」では、星辰の水を担うイシス、ネフシス、ハトホルと出会い、直感的意識を得る体験をします。
そして、「追放後のエデンの園」の図と象徴の開示を受けます。
この位階では、感情が高まり混乱するので、7ヶ月(7惑星に対応)以上の滞在が必要とされます。
そして、偽りの自己を分解、火と水で混沌を秩序に変成することが求められます。

「予備門儀式」の物語は、闇を抜けて光入るであり、錬金術的変成です。
この儀式は、水銀、硫黄、塩を象徴する3人のアデプトが司ります。
志願者は、正式に「慈悲の白い柱」に紹介されます。
これまでの位階は、「峻厳の黒い柱」に当たり、「パロケスのヴェイル(境界)」を越えて、闇から光に入るのです。
アデプトが四大元素と霊(光)の召喚を行い、志願者自身も四大元素の召喚を行います。
この見習いには、9ヶ月(懐胎期間に対応)以上の滞在が必要とされます。


<アデプタス・マイナー儀式>

「アデプタス・マイナー儀式」の物語は、クリスチャン・ローゼンクロイツ(以下CRC)の死と復活です。
そのため、儀式場(神殿)には、CRCの墓所を象徴する地下納骨所が準備されます。

納骨所は、宇宙の模造であり、地の中心にあり、大洞窟の山、神秘なるアビエグヌス山とされます。
そして、この墓所への鍵は、薔薇と十字であり、クルクス・アンサータ(生命の象徴であるアンク十字)であり、10のセフィロートの力とされます。
CRCはオシリスであり、キリストでもあります。

納骨所の天井は白く、七芒星形(=下位7セフィロート)と、その中に上向き三角形(=上位3セフィロート)と、その中に22花弁の薔薇(=22の小径)が描かれています。
七側壁は、7面(=7惑星と下位セフィロート)で、4ケルビムと聖四文字(=四大元素)が描かれています。
入り口に当たるのは、金星(=10セフィロートすべてを包括)です。
納骨所の床は黒く、七芒星形と下向き三角形(=7頭の赤竜)、7×7弁の赤薔薇、黄金十字(=救済)が描かれています。

儀式の第1段では、志願者は、装身具(徽章類)を剥ぎ取られ、粗末な黒衣を着て、「剣と蛇の図」を持ち、受難の十字架に架けられて、誓約を述べます。

誓約文には、「我は純粋にして無我の生活を率先するなり」、「大いなる業、すなわち、神聖なる助力を得て、わが霊性を浄化し、高揚させ、ついには人間以上のものになり、徐々にわが身を高次の神聖なる天才と合一させるものなり」などがあります。

そして、アデプトにより、CRCの伝説が語られます。

第2段では、第1アデプトは納骨所の中にある棺に横たわります。
そして、志願者が納骨所に招き入れられます。
アデプトは、納骨所の象徴を説明します。
第1アデプトは、志願者に「汝が心の浄化器の内に…真なる賢者の石を見出すべし」などと語り、皆は納骨所を出ます。

第3段では、棺は納骨所の外に出されます。
アデプトが、「光」を召喚し、志願者に「アデプタス・マイナーとして蘇るべし」などと語り、志願者を聖別します。
そして、「小世界の図」、「剣と蛇の図」、「山の図」、地下納骨所の象徴とその意味が説明されます。


<外陣のカリキュラム>

各位階には、特定の知識の習得、瞑想や魔術の実践が求められます。
基本的には、外陣では基礎知識の習得と基礎的瞑想が中心で、魔術実践は内陣で行われます。

具体的には、次のようなカリキュラムがあります。
(すべてを網羅したものではありません。)

0=0 ニオファイト

・知識:四大元素と錬金術の記号、12宮の記号と元素対応、7惑星の記号、ヘブライ語アルファベット、セフィロートの意味
・瞑想:四拍呼吸、点の考察、自然に内在する神性なものの認識
・魔術:カバラ十字の儀式、小五芒星儀式

1=10 ジェレーター

・知識:錬金術の基礎象徴・記号・金属対応、四元素霊、4ケルビム、小径と知恵の蛇・燃える剣、カバラ四世界、アッシャー界の10天、生命の樹上のセフィロートの配置タロットカードの22大アルカナと4スート、など
・瞑想:直線、四角形、立方体、結晶の生成、地霊、地の三幅対、地の三宮

2=9 セオリカス

・知識:7惑星の性質・線形、セフィロートと神格名・大天使名の対応、タロットの4スーツと聖四文字・四世界との対応、アストラル霊・元素霊・惑星霊・天使・悪魔の意味、など
・瞑想:月の呼吸(左の鼻孔のみ)、満ち欠けする三日月、五芒星、植物の背後にある元素

3=8 プラクティカス

・知識:錬金術の基礎理論、天宮図作成法、ヘブライ語アルファベットと小径の対応、惑星の方陣・数値・名前、立方十字・ギリシャ十字、地占象徴・守護神、タロットのヘブライ・アルファベット等の対応、水星の象徴、「追放以前のエデンの園」と「追放後のエデンの園」の解説、「一般指導及び魂の浄化に関して」、など
・瞑想:水、水の3宮、感情の統制、菱形、水星、8

4=7 フィロソファス

・知識:地占護符、ゾロアスター、クリフォト、タットワ、多線形・多角形、など(以上は正規のものではなく副講義として)
・瞑想:火の三角形、金星、宇宙の愛、キリストを霊として感知、火、火の3宮

また、実践には、次のようなものもありました。
・タットワ・ヴィジョン
・地占
・タロット占術
占術の目的は、直感や想像力の養成とされます。


<内陣のカリキュラム>

内陣のカリキュラムは、次のようなものなどがあります。

予備門

・知識:儀式書を読解と記憶、生命の樹の完全なる図表作成、生命の樹と色彩、小宇宙としての人間
・瞑想:各位階の許可紋章の十字の瞑想、十字・犠牲(死と復活)
・魔術:中央の柱
・その他:オーラ統御(心理学の勉強、他人の意見に対する制御、深呼吸の訓練など)、タットワ占術、五芒星儀式を行って夢で与えられた教義を覚醒後に想起

5=6 アデプタス・マイナー

・知識:薔薇十字完全象徴、ニファイト儀式の象徴解説(Z文書)、護符と印形、テレズマ的似姿、タットワ
・魔術準備:自分用の魔術道具の作成・聖別、自分専用の儀式を書く
・魔術:五芒星儀礼、六芒星儀礼、薔薇十字儀式、薔薇十字聖別儀式、喚起儀礼、護符作成、隠身儀式、変身術儀式、霊的発達儀式、生まれなき者の儀式、エノク魔術、など
・霊視:スクライング、アストラル・プロジェクション、パスワーキング
・占術:地占、タロット占術

5=6 アデプタス・マイナーの課題は、数段階に分けて行われます。
また、この位階は、「ジェネレーター・アデプタス・マイナー」と「セオリカス・アデプタス・マイナー」の2段階があり、8種の試験によって昇格することになっていました。


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