黄金の夜明け団の魔術と技法 [近代魔術]

このページでは、「黄金の夜明け団(以下GD)」が行った具体的な魔術、及び、その関連技法について、簡単にまとめます。

とは言っても、当サイトは思想史がテーマですから、概要を知るためのものであって、実践を想定した説明ではありません。


<魔術の種類>

GDの知識講義文書「Z2」では、ニオファイト儀式から引き出される魔術を5つに分類して、それを、御名を構成するユダヤ文字に対応させています。

ヨッド:喚起などの儀式魔術
へー :護符聖別
シン :霊的発達儀式、変身術、隠身術
ヴァウ:占術
へー :錬金術

最初の3つは、細かく見れば、多数の種類の魔術から構成されます。
占術は、占いだけでなく、直感や想像力を養成する目的で行われます。
錬金術は、物質レベルの実践的なものは、団としては行っていませんが、団員の中にはそのような錬金術師もいました。

「喚起」は、霊的存在を呼び出すことですが、元素霊などを呼び出す場合には「喚起(エヴォケイション)」を、天使・大天使などを呼び出す場合には、「召喚(インヴォケイション)」などと使い分けることもあります。

また、ここには含まれていませんが、内陣では、「霊視」も重視されます。


<基礎訓練>

魔術を可能とするための基礎訓練、基礎能力には下記のようなものがあります。

・リラックス法(ボディスキャンを行って肉体から弛緩させる等)
・呼吸法(四拍呼吸:吸4拍―止2拍―呼・4拍―止2拍)
・象徴の内面化(象徴を勉強して、瞑想し、無意識に植え付ける)
・イメージ喚起・視覚化(現実を見ているようにイメージを思い描く、観想法)
・能動的・創造的な想像力(夢見の技術、GDでは客観性が求められる)
・エーテル(気)の操作
など

象徴の内面化とイメージ喚起ができると、特定の象徴の「鍵」となる神名を唱え、イメージを喚起することで、その象徴の内実となる「力」を導き、変性意識状態に導くことができるようになります。
また、エーテルの操作能力によって、その「力」をエーテルに乗せることで、護符へのエネルギーを充填、聖別などができるようになります。

また、象徴の内面化と創造的想像力ができると、特定の象徴に対応する霊的世界の霊視を行なうことができるようになります。
また、アストラル・プロジェクションを組み合わせることによって、その世界にトリップすることができるようになります。

こういった基礎技術は、密教とも共通していますし、世界的に同じです。
GDが本格的な魔術の実践を行っていたと判断できるのは、上記の能力、訓練の重要性を理解し、カリキュラムに組み込んでいたらしいことが、直接、間接に知られているからです。


<儀式の基本次第>

GDの儀式魔術の基本的な式次第は、次のようなものです(シセロ夫妻の「黄金の夜明け団入門」による)。

・開式
開始宣言(神の姿をまとってから)
追儺儀式
最初の浄化と聖別:水と火による浄化、水の三角形と火の三角形の召喚
周行(光の渦動の導入):時計回りに3周、東で投射と沈黙の合図
礼拝:宇宙の主を称える

・中央点(本儀式)
召喚儀式(高次な霊を召喚し、その支配下の霊を喚起することが多い)
至高者の召喚
主要作業

・閉式
最終浄化と聖別
逆周行:反時計回りで
礼拝
退去許可:自覚的な退去を促す
追儺儀式
閉幕宣言

こういった次第は、特別なものではなく、世界の宗教儀式で共通するごく一般的なものです。
ですが、それを魔術的な力を持つものにするには、先に述べたような能力を行使することが必要です。

GDの魔術では、神霊的存在のヒエラルキーが重要で、上位の存在の権威・監視・命令のもとで、下位の存在を使役します。
そのため、原則的に、召喚や祈祷の順番は最上位からで、帰還は最下位からです。


<司官と神殿>

儀式魔術を行なう司官は、次のような構成になっていました。

まず、各神殿(支部)ごとに内陣の位階を持つ3人の首領(テンプル・チーフ)がいました。

   (名前)      (役割)    (エジプト神)(位階)
・インペレーター   :指揮官、法を授ける:ネフシス   6=5
・プレモンストレーター:案内役、教師   :イシス    7=4
・カンセラリウス   :高官、書記    :トート    5=6

そして、儀式の遂行を行なう司官が7人いて、春秋分点で半期ごとに交代になりました。

・ハイエロファント:秘儀を授ける司祭  :オシリス
・ハイエルース  :守護者、追儺    :ホルス
・へゲモン    :案内役、志願者を誘導:マアト
・ケリクス    :先触れ、看視者   :アヌビス
・ストリステス  :準備者       :ムト
・ダドゥコス   :松明を持つ者、浄化 :ネイス
・フィラクス   :歩哨、守衛     :オポウェスト

神殿の基本構造は、祭壇(立方体を2つ重ねる)、白黒の二柱、団旗(東西に2旗、もしくは、四大元素を象徴する4旗)です。
祭壇には、GDの象徴である三角十字や、四大元素を象徴する魔法具などが載せられます。

ですが、神殿の実体は、物理的な神殿ではなく、観想によって作られたアストラル・ライトの神殿です。
これは、例えば、密教の曼荼羅も同じです。

神殿は、「春秋分点儀礼」によって、年2回、聖別が行われました。
また、5=6アデプタス・マイナー儀礼で使われる地下納骨所は、「達人の地下納骨所聖別儀式」で、年1回、キリスト聖体節の頃に聖別が行われました。


<場の浄化・聖別儀式>

まず、最初に、場を浄化・聖別する(結界を張る)魔術の儀式から、簡単に紹介します。

場の聖別の方法は、世界の宗教で共通性があり、世界創造の原初の聖なる時空の秩序(コスモロジー)を再現することです。
最も典型的でシンプルな形は、GDでもそうですが、四方神の召喚です。

一方、浄化・追儺は、本格的に行なう場合は、強力な調伏力を持った神格で脅すことが、一般的です。
分かりやすく密教で例を出すと、不動明王のような忿怒尊、武器と同体であるような神格です。
GDでは、通常ではそこまでは行いません。

・五芒星儀式

GDで最も基本的な儀式として行われたのが、「五芒星儀式」です。
これは、ほとんどすべての儀式の最初と最後に行います。
また、元素霊などの召喚・追儺にも使います。

ただ、後述する「カバラ十字儀式」の後に行います。

「五芒星」は、四大元素と霊の象徴です。
「五芒星」には、四大元素、及び、霊の能動と受動、計6種の召喚と追儺、つまり、合計12種類があり、それぞれの描き方があります。

「五芒星」は、元素の召喚の場合は、対象とする元素に対応する角に向かって、追儺はその角から始めて描きます。
霊の場合は、能動と受動の五芒星があり、能動の場合は能動元素の火から風に向けて、受動の場合は受動元素の地から水に向けて始め、追儺はそれぞれ逆になります。

「五芒星儀式」は、四方で、各聖名を称えながら、五芒星を描き、四大元素の霊を召喚、追儺します。
また、四方に、燃える五芒星と四大天使を、背中に六芒星を観想します。

「五芒星儀式」には、外陣でも行われた「小儀式」と、「大(至高)儀式」があります。

「小儀式」は、四方で、地の五芒星を描きます。
「大儀式」は、元素霊や惑星霊などを召喚する時に、「小儀式」に続いて行います。
四方で、霊の能動五芒星と各元素の五芒星と、中央にその元素の印形を描きます。
また、エノク語や合図も使います。

*もう少し詳しい説明は、姉妹サイトの五芒星儀式のページも参照してください。

・六芒星儀式

「六芒星形」は、7惑星の象徴(中央が太陽)であり、大宇宙の象徴です。
「六芒星形儀式」も、場所の浄化・聖別や、惑星霊やセフィロートの諸力などの召喚、追儺で使います。

「六芒星形」は、対象となる惑星に対応する角から、召喚は時計回り、追儺は反統計回りに描きます。
太陽を対称とする場合は、すべての六芒星形を描きます。
また、中央に対象惑星の印形を描きます。

「六芒星形儀式」は、エジプト神の合図をして、四方で、神名を称えながら、六芒星を描きます。

「六芒星儀式」にも、「小儀式」と「大(至高)儀式」があります。

「小儀式」は、「小五芒星追儺儀式」に続いて召喚から行います。
四方で、土星の六芒星を描き、その前後に「INRIの解析」を行います。

「大儀式」は、「小五芒星追儺儀式」、「小六芒星追儺儀式」に続いて召喚から行います。
四方で、七惑星の六芒星を一筆書きで描きます。
この時、召喚には各惑星の角に向かって、追儺にはその角から描きます。

場を浄化・聖別する方法としては、他にも、「水と火(の三角形)による浄化・聖別」、「周行」があります。


<自身の浄化・聖別>

次に、魔術師自身を浄化、聖別する儀式です。
と言っても、GDで、場の浄化/自身の浄化といったカテゴリがあるわけではありませんが。

・カバラ十字儀式

すべての魔術の最初と最後に行なうのが、「カバラ十字儀式」です。
これは、4つのセフィロートと身体部位を対応させて、光の十字架を観想し、アストラル体(オーラ)の中に建てるものです。
この儀式は、外陣でも行われました。

額で「アテー(汝)」→胸から地面で「マルクト(王国と)」→右肩で「ヴェ・ゲブラー(力と)」→左肩で「ヴェ・ゲドラー(栄光あれ)」と十字を切り、最後に胸の前で「レ・オラーム・アーメン(永遠に)」と手を組みます。
この時、これに合わせて、光を垂直に降ろし、水平に移動させます。

*もう少し詳しい説明は、姉妹サイトのカバラ十字のページも参照してください。

・中央の柱

「中央の柱」は、体に合わせて「生命の樹」の「中央の柱」を観相して、それをアストラル体の中に立てるものです。
56267.JPG

まず、体の中心軸に沿って、神名とともに、光を上下させます。
具体的には、頭頂に白色光(テケル)、喉に藤色光(ダアト)、心臓に黄色光(ティファレット)、腰に紫色光(イェソド)、足に斑色光(マルクト)です。

次に、体の前後、左右で光を周回させます。
そして、頭から光を噴水のように卵状に下降させます。
次に、足から右回りに螺旋状に上昇させます。

*もう少し詳しい説明は、姉妹サイトの中央の柱のページを参照してください。

イスラエル・リガルディーが「中央の柱」(1938)を出版して、広く知られるようになりました。
また、ダイアン・フォーチュンの弟子だったW・E・バトラーの「光の侍徒」一派が、この技法を発展させているようです。


<霊的発達儀式、生まれなき者の儀式>

「霊的発達儀式」、「生まれなき者の儀式」は、直接、「光」として召喚された「聖守護天使」、つまり「高次の自己」と合一し、霊的発達を促すものです。

密教で言えば、ちょうど、光明から仏を勧請して、一体化、つまり、自己生起する本尊瑜伽、成就法に当たります。

・生まれなき者の儀式

「生まれなき者の儀式」では、「光」は「生まれなき者」と表現されます。
また、儀式中には、「我は彼なり、生まれなき霊なり…すべての霊を我に服従させよ。…我が心、高次なるものへ開かるべし」、などと語られます。

最初に行なう「五芒星至高儀式」では、エジプト神の姿を観想してまとって行いますが、「光」の召喚時には、自身を復活するオシリスと見なします。

GDでは、神の姿をまとう(変身術)は、自分に背後に大きな神の姿を観想し、それがかぶさるようにして自分と一体化します。

「生まれなき者の儀式」の中心になる召喚時の観想は、黒い卵の中心から蓮の花の棒を天に伸ばし、そこに光を降ろす、というものです。

*もう少し詳しい説明は、姉妹サイトの生まれなき者の儀式のページも参照してください。

・霊的発達儀式

「霊的発達儀式」では、「光」は、主に「高次の天才」と表現されます。
また、儀式中には、「我が中にある低次の自我より進みて、広大なる神のうちにある至高の自我に到達せん」、などと語られます。

四方の聖別やその後の召喚でも、エノク魔術の天使の召喚を行います。

また、儀式中に、3度、アストラル・プロジェクション(霊体離脱)を行って自分の肉体と対面も行うのも特徴です。


<霊視>

「霊視」は、「飛翔する巻物」第11巻で、次の3つに分けられています。

1 スクライング(霊的ヴィジョン)
2 アストラル・プロジェクション(霊的ヴィジョンの旅)
3 パス・ワーキング(様々な次元への上昇)

「スクライング」は、特定の世界を、現実世界の肉体の意識を保ったまま、距離をとって、絵画や映画を見るように霊視する方法です。
伝統的には、水晶の中に見ますが、白い壁、ブラック・ミラーなど、どこに見てもかまいません。

それに対して、「アストラル・プロジェクション」は、特定の霊的世界を、覚醒夢のように、アストラル体を投射して(その世界にもう一つのアストラル体を作って)、自分がその中に入り込んで体験する方法です。

「パス・ワーキング」は、「アストラル・プロジェクション」で、主に、「生命の樹」の小径を順に辿って、霊的世界を上昇していくことです。

「アストラル・プロジェクション」の場合は、例えば、何らかの象徴的な図を見ることから始めて、幕を上げるか、扉を開いて入るように、スイッチして目的の霊的世界に入っていきます。

霊的世界では、その世界を良く観察します。
そのために、まず、案内人を見つけます。
そして、その世界を支配する霊的存在、神や天使などを探し、その力を感じ、あるいは、質問して回答を得ます。
最後には、最初の扉を通って、現実世界に戻ります。

この体験のストーリーは、あらかじめかなりの部分を決めて行なう場合と、ほとんど決めずに行なう場合があります。
決めて行なう場合は、その誘導物語を、誰かが語るか、録音したものを流します。

GDでは、その霊視する象徴世界が正しいものであるかどうかという、客観性を重視します。

具体的には、まず、あらかじめ、徹底して象徴を勉強することが必要です。
特定の象徴と、それに照応するあらゆるものを無意識レベルでつなげておくのです。

霊視の段階では、出会った対象が、本物かどうかを、その姿が象徴に適合するかどうかで判断します。

また、霊視の中で出会う存在が、正しい存在であるかどうかを試験するための合図や呪文を、無意識レベルで覚えておく必要があります。
出会った時に、その合図や呪文によって確かめるのです。
正しい存在でない場合は、退けることができます。

逆に、呪文は、自分自身の意識を、その世界に適したものに変化させることにも使えます。
例えば、「門番」的な存在が道をはばんだ場合に、通してもらうために使います。
あるいは、霊視した世界がぼんやりしている場合に明瞭にするためにも使います。

*もう少し詳しい説明は、姉妹サイトのパスワーキングのページを参照してください。


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