ヴィヴェーカーナンダと普遍宗教 [近・現代インド]

ヴィヴェーカーナンダは、1893年にシカゴで行われた世界宗教会議での「普遍宗教」についての講演をきっかけに、世界的な名声を得た、近代インドを代表する聖者です。

ヴィヴェーカーナンダは、欧米に、ヒンドゥー教、特にヨガとヴェーダーンタ哲学を知らしめた活動と、国内における活動によって、近代におけるヒンドゥー教の伝統復興・改革の代表者の一人と見なされています。

ヴィヴェーカーナンダはラーマクリシュナの弟子でしたが、字を読めなかったラーマクリシュナが、民衆的なヒンドゥー教としてのカーリー信仰を核としていたのに対して、ヴィヴェーカーナンダは、ヴェーダーンタ哲学の不二一元論を核とした思想を持っていたのが特徴です。

また、ヴィヴェーカーナンダは、ラーマクリシュナの中に芽生えとしてあった「普遍宗教」への志向を、不二一元論と4つのヨガの実践を介して、新たな次元で展開したと言えるでしょう。


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<人生と人>

ヴィヴェーカーナンダ(ナレーンドラナート・ダッタ、1863-1902)は、カルカッタのクシャトリアの家庭に生まれました。
1880年、キリスト教系大学に入り、独学も含めて西洋の思想・歴史・哲学を学びました。

その後、ブラフマ・サマージに加入しましたが、ブラフマ・サマージはヴェーダーンタ哲学やウパニシャッドの非偶像的・非人格的宗教への回帰を主張していました。
ですが、ヴィヴェーカーナンダは、神の姿を見たいと望みました。

1881年、ラーマクリシュナに出会い、彼の寺院に招かれました。
寺院での最初、ラーマクリシュナは、ヴィヴェーカーナンダをナーラーヤナと見なして、泣いて崇拝しました。
ヴィヴェーカーナンダは、ラーマクリシュナをおかしな人間と思いましが、ラーマクリシュナが神を具体的に見ていると聞いて心を動かされました。

2度目にラーマクリシュナを訪ねた時は、ラーマクリシュナは冷静に対応し、ラーマクリシュナがヴィヴェーカーナンダに足を載せると、ヴィヴェーカーナンダは意識消失しかける体験をして、制止しました。

ですが、3回目の訪問時には、ラーマクリシュナはヴィヴェーカーナンダに手を触れるだけで気絶させ、その間に、過去世や使命について質問して、ヴィヴェーカーナンダが特別な人間であると確信しました。

ヴィヴェーカーナンダは、ラーマクリシュナの元に通い続けましたが、教えを無条件的に受け入れることはせず、自分の考えを主張してぶつけました。

ヴィヴェーカーナンダは、父の死後、仕事を探しましたが、結局は、出家を決意しました。

1886年、ヴィヴェーカーナンダは、ブラフマンと合一して、無意識に至る三昧を体験しました。
三昧に留まり続けたいと思っていたヴィヴェーカーナンダに対して、ラーマクリシュナはこれを引き止めて、自分の喜びに浸らず、世の中で偉大な仕事をする使命があることを説きました。
これは、ラーマクリシュナ自身が、カーリー女神から説かれたことでした。

同年、ラーマクリシュナが亡くなり、ヴィヴェーカーナンダは後継者となりました。
ですが、1888年、彼は、放浪に旅に出ました。
彼は、その旅の途中で、今後に進むべき道に迷いましたが、夢にラーマクリシュナが現れ、人の中の神に奉仕することを選びました。

また、イギリス植民下のインドの貧困を見て、人々を宗教的に導くだけではなく、窮乏から救うことが重要と考え、この2つの使命に一生を捧げることを誓いました。

そして、1893年、インドを救うためにアメリカ行きを決意します。
シカゴで行われる世界宗教会議に出席するという具体的な目的もありました。
ですが、すでに出席者の締め切りは終わっており、何のつてもありませんでした。
それでも、関係者に彼の人格が認められて、講演者として認められました。

この会議で、ヴィヴェーカーナンダは、原稿なしに普遍宗教をテーマに講演して、評判を得ました。
彼一人が、自分の宗教ではなく、普遍宗教の可能性について語り、それがこの会議の意味だと主張しました
彼は、各宗教が、他の宗教を吸収して個性を伸ばす形で、普遍性へと至るべきだと説きました。

ヴィヴェーカーナンダは、この会議をきっかけにして、神との静かな交流が終わり、人々に教えを説く喧騒な生活が始まることを悟り、子供のように泣いたそうです。

ヴィヴェーカーナンダは、アメリカ各地で講演し、インドの宗教、ヴェーダーンタ哲学、そして、各種のヨガについて説きました。
彼がアメリカやロンドンで行った講演は、「ラージャ・ヨガ」、「バクティ・ヨガ」、「ジュニャーナ・ヨガ」などとして出版されました。

1896年には、NYに「ヴェーダーンタ協会」を設立しました。

1898年には、インドで、ブラフマナンダ、ヨガナンダと共にラーマクリシュナ・ミッション設立し、古典の勉強会や慈善事業を行いました。
彼は、カースト廃止を訴え、他者への奉仕としてのカルマ・ヨガを主張し、弟子の教育にも尽くしました。

ヴィヴェーカーナンダは、「この世界に一人でも束縛されているものがあれば、解脱を望まない」とも語りました。
これは大乗仏教の精神ですが、彼は、ブッダを最も偉大な人物とも評していて、ブッダガヤで瞑想したこともありました。

1899年頃には、喘息や糖尿病で、病を壊しました。 

1901年には、岡倉天心の来訪を受けました。
体調を理由に、日本への講演の依頼は断りましたが、一緒にブッダガヤへ同行しました。

1902年、ベンガル暦で良き日を選んで、意図して入滅しました。
医者による死因は卒中か心臓麻痺となっていますが。


<普遍宗教>

ヴィヴェーカーナンダは、シカゴの世界宗教会議で講演して以来、「普遍宗教」というテーマを持っていました。
彼は、ヒンドゥー教やヴェーダーンタ哲学が「普遍宗教」である、という説き方はしませんでした。
彼は「普遍宗教」は、以下のように説きました。

まず、ヴィヴェーカーナンダは、世界の諸宗教は矛盾せず、相補的にあって、それぞれが普遍的真理の一部分を取り上げていると言います。
そして、次のように語ります。

「普遍宗教はすでに存在している…人間の普遍的同胞愛がすでに存在しているように、普遍的宗教もまた存在している。」
「…それぞれの宗教を説く…人々が…説教するのをやめさえすれば、普遍的宗教がそこにあるのを見出すだろう。」(以上、1900.1.28 カルフォルニアでの講演「普遍宗教」)

また、ヴィヴェーカーナンダは、「自分が理想とする宗教」に関して、次のように語ります。

「いかなる一つの普遍的哲学をも、いかなる一つの普遍的神話をも…いかなる一つの普遍的儀礼をも意味していない。」
「宗教の場合も…われわれの精神は容器のようなものであり、…神はこれら異なる容器を満たす水のようなものであり…けれども神は一つである、…これが、われわれが得ることができる普遍性の唯一の認識である。」

「私は普及させたいのは、…それは等しく哲学的で、等しく感情的で、等しく神秘的で、等しく行動の助けとなるものでなければならない。」
「四つの方向に調和よくバランスが取れることが、私の宗教の理想である。」(以上「普遍宗教の理想」)

そして、その実践方法として、4つのヨガについて語りました。


<4つのヨガ>

ヴィヴェーカーナンダは、人の性質の応じたものとして、4種のヨガ、「カルマ・ヨガ」、「バクティ・ヨガ」、「ラージャ・ヨガ」、「ジュニャーナ・ヨガ」を説きました。

「カルマ・ヨガ」は、行動的な人(働き手)向けで、無執着の状態で本務を遂行する、自分の生命を尊重することです。
ヴィヴェーカーナンダは、在家の無名のカルマ・ヨギに比べると、イエスやブッダも二流の英雄だと語っていて、これを重視しています。

「バクティ・ヨガ」は、情緒的な人(献身者)向けで、愛の対象をレベルアップしていく方法で、他の目的なしに神を愛し、善を愛すことです。
自分を放棄し、「神のもの」と感じます。
ラーマクリシュナは「バクティ・ヨガ」が現代人に一番適した方法として特別視しましたが、ヴィヴェーカーナンダはそうは述べません。

「ジュニャーナ・ヨガ」は、哲学的な人向けで、普遍の存在と一つになり、また、下等な虫も最高の人間もすべては神の顕現と見ることです。
心に浮かんでくるものを否定し、ヴェーダーンタの不二一元論の見解に立って、究極の自分を「サット・チット・アーナンダ」と考え、そして、すべてに偏在すると瞑想します。

「ラージャ・ヨガ」は、心に対して分析的な人(神秘家)向けで、無数の思考を止めて精神を制御する、微細な現れを感じることです。

「ラージャ・ヨガ」という言葉は、本来は「ハタ・ヨガ」のサマディ段階のことを指しますが、ヴィヴェーカーナンダは、「古典ヨガ(八支ヨガ)」の意味で使っています。
ラーマクリシュナは、これを「カルマ・ヨガ」の中に含めていましたが、ヴィヴェーカーナンダは別のものとして分けました。

また、ヴィヴェーカーナンダは、「ラージャ・ヨガ」のプラーナヤーマの段階の説明の中で、「ハタ・ヨガ」という言葉を使わずに、「ハタ・ヨガ」的な方法を、次のように説きました。

・ムーラダーラ・チャクラの中にあるクンダリニーを、スシュムナーを開いて登らせる
・性的エネルギーを制御して、最高のエネルギーのオージャスに変えて、頭部に蓄える

ですが、彼は「ハタ・ヨガ」を理解していたようですが、重視することはありませんでした。


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