ニュー・サイエンス [現代]

ニューエイジ思想に共鳴して、従来の実体主義的、機械論的、還元主義的、原子論的なアプローチの科学ではなく、関係主義的、有機体論・システム論的、階層的・全体的、場の理論的なアプローチをした科学が生まれ、これらが総称して「ニュー・サイエンス」と呼ばれます。

もともと、量子力学の世界観は、従来の西洋の原子論的な世界観では理解できず、ボーア、ハイゼンベルグ、湯川秀樹などのように、量子力学を作った物理学者の中には、タオイズムや仏教などの東洋思想の世界観に注目した人が多くいました。

このページでは、ニュー・サイエンスとして名前の挙がる科学者達、フリッチョ・カプラ、デヴィッド・ボーム、ルパート・シェルドレイク、アーサー・ケストラーの思想を簡単にまとめます。


<フリッチョ・カプラのタオ自然学>

物理学者のフリッチョフ・カプラは、現代物理と東洋思想の世界観の類似性を論じ、また、世界観のパラダイム・チェンジの必要性を主張して、ニュー・サイエンスの代表的な論客になりました。
カプラは、神秘主義という言葉も肯定的に使います。

カプラは、「タオ自然学」(1975年)で、東洋の諸経典などと現代物理学者の言葉を引用しながら、ヒンドゥー教、仏教、易経、老荘思想、禅といった東洋思想の世界観と、量子力学などの現代物理の世界観が類似性していることを示しました。

以下、「タオ自然学」の各章で、現代物理のどのような理論が、東洋思想の世界観と似ていると論じたのかを、簡単にまとめます。

「万物の合一性」という章では、量子力学の観測の問題を取り上げて、主客の分離ができないことを論じました。

「対立世界の超越」という章では、量子力学における粒子と波動の相補性を取り上げて、二項対立が成り立たないことを論じました。

「四次元時空」という章では、相対論などによる時空の相対性などを取り上げて、絶対時空の非実在性について論じました。

「ダイナミズム」という章では、現代物理の波動としての世界観と振動宇宙論が、動的で生成的な宇宙論であると論じました。

「空と形象」という章では、場の理論が形象の背後に実在を見ていることを論じました。

「コズミック・ダンス」という章では、素粒子物理学(場の量子論)における素粒子の生成・消滅などが、シヴァのダンスとして表現される宇宙論と似ていることを論じました。

「変化のパターン」という章では、S行列理論が、易経の体系と同様に、関係主義的(事的)世界観であることを論じました。

「無碍の世界」という章では、基本的構成要素を否定して要素の調和を説く量子力学のブーツストラップ理論を紹介しました。
カプラはジェフリー・チューのブーツストラップ理論を支持していましたが、残念ながら、その後の物理学の流れで主流とはなりませんでした。

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*以下、写真はすべて、顔が掲載された書というだけの意味で、本文で触れた書ではありません


<デヴィッド・ボームの内蔵秩序>

量子力学を専門にする理論物理学者のデヴィッド・ボームは、「内蔵秩序(Implicate order、内包秩序、内在秩序)」という概念を中心にして、ホログラム的な部分即全体の世界観を提唱しました。

ボームによれば、時空の各領域は、宇宙全体の構造を包み込んでいるのです。
そして、自然は内包された秩序ごと、全体として運動(ホロ・ムーヴメント)します。

それに対して、知覚される秩序は「表出秩序(Explicate order、外在秩序)」と表現され、内蔵秩序の中の特定の相を持ち上げたものなのです。
つまり、「思考」は「マインド」という内蔵的全体性を持つものから表出されたものにすぎないのです。

ですが、「思考」を停止させて生まれる「洞察」は、脳という物質に変化をもたらすと言います。

ちなみに、この内蔵/表出という考え方は、ベルグソン―ドゥルーズの哲学とも類似しています。

ボームは、量子力学のコペンハーゲン解釈に反対し、ド・ブロイのパイロット波理論を発展させ、内蔵秩序の隠れたパラメーターを導入した解釈を行いました。
彼の解釈(隠れた変数理論、ボーム解釈)には、現在でも一定の支持者がいます。

ボームが哲学と物理学を結び付けて語った書には、「全体性と内蔵秩序」(1980年)、「科学、秩序、創造性」(1987年)などがあります。

ボームは、クリシュナムルティとの深い交友関係があり、ダライ・ラマとの対談も知られています。

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<ルパート・シェルドレイクの形態形成場理論>

ケン・ウィルバーは、ボームの世界観に階層性が欠けているという批判を行いました。
ケン・ウィルバーの世界観では、階層性は基本的要素です。

これに対して、独自の階層性を持った世界観の可能性を提唱したのが、ルパート・シェルドレイクです。
彼は、「形態形成場」という概念を、物理学や生物学といった領域を越えた仮設として考えました。

シェルドレイクは、自然科学や哲学、科学史を学び、ケンブリッジで生化学の博士号を取得し、細胞生物学を研究する科学者でした。
また、彼は、インドでも生物学の研究を行った時期があり、彼の最初の著作、「生命のニューサイエンス」(1981年)は、南インドのアシュラムで執筆されました。

「形態形成場理論」は、何らかの形態(物理的なものから生物的なもの、人間的な思考などまで含めて)が一旦生まれると、それが場として形成・保持され、さらに、反復によって強化されるという理論です。
特定の形態形成場が形成されると、それ以降、場の影響によって、空間を越えて、同様の形態が形成されやすくなるのです。

例えば、新しく合成されたばかりの化学物質は、非常に結晶化させにくいけれど、時間が経つにつれて(形態形成場が確立されて)結晶化しやすくなる、という経験的事実があるそうで、これが「形態形成場理論」の具体的な一例として、あげられます。

また、形態だけでなく、運動に関しても同様の場が発生するとして、「運動場」と名付けました。

「形態形成場理論」は、上位の世界(例えばアストラル界)が下位の世界(例えば物質界)のひな型・原因になるという、伝統的な神智学の思想を、科学の言葉に翻訳したような理論です。

シェルドレイクは、「形態形成場」には階層性があって、物質に対して精神は、「形態形成場」の「形態形成場」とも考えることができる、という仮説を提唱しました。

ですが、彼の理論は、数式にできるようなものではないようですし、例えば、微分だとか、あるいは、超準的数学とつなげて考えることもないようです。

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<アーサー・ケストラーのホロン>

アーサー・ケストラーは、ジャーナリスト、小説家、政治活動家、哲学者であって、科学者ではありません。

ですが、彼は科学にも詳しく、1967年に出版した「機械の中の幽霊」では、機械論的還元主義に反対して、「ホロン」という概念を提唱して、ニュー・サイエンスやケン・ウィルバーにも影響を与えました。
また、1978年の「ホロン革命」でも、その概念を発展させました。

ケストラーのホロン理論は、創造的・階層的なシステム理論で、宇宙は、原子のような最小の存在単位とその法則には還元できないという考え方です。

「ホロン」は、上位に対しては部分であり、下位に対しては全体である宇宙の存在単位です。
存在は「ホロン」が連なる階層構造になっていて、その構造は「ホラーキー」と呼ばれます。
「ホロン」は、同階層の他の「ホロン」に対して自立すると同時に共同することで、創造も行われます。

「ホロン」の世界観は、還元主義に対して打ち出されたという側面が強いので、各ホロン間の内外での矛盾性や否定性の力動的な関係については十分に論じていないように感じます。

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以上の他に「ニュー・サイエンス」と形容される学者としては、超常現象を認める生物学者のライアル・ワトソン、秩序の発生に関する「散逸構造」のイリア・プリゴジン、脳のホログラム的構造を提唱したカール・プリグラムなどがあげられます。

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