マイケル・ハーナーのコア・シャーマニズム [現代]

マイケル・ハーナーは、ネオ・シャーマニズムの元祖的にして代表的な存在です。

彼は、伝統的なシャーマニズムの中から、その核となる世界観、実践技法を抽出し、現代人が実践できる形で再構成した「コア・シャーマニズム」という実践体系を教えています。

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https://www.shamanism.org/



<歩み>

マイケル・ハーマーの歩みを、年代順にまとめます。

ハーナーは、1929年にワシントンで生まれました
1956年からエクアドルのアンデスのヒバロ族のフィールドワーク調査を行い、カルフォルニア大学バークレー校で人類学の博士号を取得しました。

1960から61年にかけて、ペルーのアマゾンのコニーボ・インディアンのシャーマンのもとで、幻覚性植物アヤワスカによって非日常的な体験をします。
アヤワスカは、あらゆる薬物を実践したウィリアム・バローズが、究極のものと言った薬物です。
その後も、ヒバロのシャーマンのもとで幻覚植物マイクアによるトリップを体験します。

1963年、カルフォルニア大学バークレー校で講義をした時、カスタネダの来訪を受けて、ドン・ファンの話を聞き、何か書いた方が良いとアドバイスして、2-3週間後に原稿を見せてもらったそうです。
また、ヤキ・インディアンがダツラ(幻覚性植物)を腹に塗り込んで使うことが本当かどうか調べてほしいと依頼しました。
カスタネダからドン・ファンに一緒に会いに行こうと誘われましたが、スケジュールの都合で断りました。
ちなみに、ハーナーは、カスタネダの師のドン・ファンのようなシャーマンには会ったことがないけれど、その存在は信じていました。

1960年代後半には、カルフォルニア大学、エール大学、コロンビア大学などで教鞭をとりました。

1970年代初頭、コネチカットでドラムを使ったシャーマニック・トランスのワークショップを始めました。
ハーナーはトリップのための方法として、幻覚性植物ではなくドラムを選んだわけです。

1972年、最初の著作「幻覚植物とシャーマニズム」、「ヒバロ、神聖な滝の人々」を出版。
1979年、コネンチカットでシャーマニック研究センターを設立。

1980年、「シャーマンへの道」を出版。
この書は、ネオ・シャーマニズムの聖典のようになりました。

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1987年、アカデミズムを去り、シャーマニック研究財団の活動に専念するようになりました。

2013年、「シャーマンへの道」の待望の続編となる「洞窟とコスモス」を出版。
上方世界と地下世界への旅を扱った書ですが、残念ながら、未訳でもあり私はまだ読んでいません。

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<コア・シャーマニズムの特徴>

ハーナーのコア・シャーマニズムは、特定の部族のシャーマンの伝統を継承したものではなく、シャーマニズムの核となるものを抽出して、現代人に受けて再構成したものです。

ハーナーは、「エクスタシー(脱魂)」状態になって、異世界を訪れることを、シャーマンの条件とします。
また、シャーマンの特徴、定義について、次のように書いています。

「シャーマンは変性意識状態で、隠れたリアリティと接触し、力や知識を得て、他の人を助ける」
「一つ以上のスピリットを従えている」
「有益な力を取り戻すか、有害な力を取り除く」

そして、ハーナーは、個人の意識の成長や心の解放などの求道的なものではなく、他人の病気治療を重視します。
ハーナーは、「彼をシャーマンと呼べるのは治療を受ける当人たちだけである」と書いています。

ハーナーは、トランス状態を「シャーマン的意識状態」と表現し、「日常的意識状態」と区別します。
そして、それぞれの意識状態が体験する別のリアティが存在するとし、それを「非日常的リアリティ」と「日常的リアリティ」と表現します。

ハーナーは、シャーマンは、この2つのリアリティを区別していて、混同することはないと言います。

「シャーマンは、シャーマン的意識状態のリアリティが日常的リアリティとは分離したものであることを認識しており、両者を混同してはいない。」(シャーマンへの道)

つまり、2つのリアリティ(世界)を移動するのがシャーマンです。

「日常的リアリティ」では神話でしかないものが、「非日常リアリティ」では、リアリティそのものなのです。

そして、ハーナーの「コア・シャーマニズム」では、個々人が持つ、日常的世界観を変える必要はないと言います。
もともと持っている「日常的リアリティ」をそのままに、それと区別した「非日常的リアリティ」を付け加えるのです。

また、シャーマンは、霊視能力を持ち、これを「シャーマン的エンライトメント」と呼びます。

これは、地上の日常世界のリアリティにいつつ、霊的存在を物質世界に重ねて霊視できる状態です。
つまり、「エクスタシー」状態にならずに、「日常的リアリティ」と「非日常的リアリティ」を同時に見る状態です。

「霊視」は、霊的存在は、昼間には見にくいので、主に夜に変性意識状態になって見ます。


<ファミリー・シャーマニズムと専門的シャーマニズム>

ハーナーのコア・シャーマニズムは、誰もが利用、体験できる方法を提示していますが、皆に本格的なシャーマンになることを勧めているのではありません。

シャーマニズムのあり方を、シベリアのコリャック族のように、「ファミリー・シャーマニズム」と「専門的シャーマニズム」の2つに分けて考えます。
「ファミリー・シャーマニズム」は、プロのシャーマンではない人物が、家族に対して、比較的な簡単な方法で治療を行うことです。

ハーナーは、プロのシャーマンになるのに必要なこととして、次のようなことを挙げています。

・荒野の放浪
・ヴィジョン・クエスト
・死と再生のシャーマン的体験
・オルフェウス的な(地下世界への)旅
・死後の生命
・上方世界への旅


<アヤワスカのトリップ体験>

ハーナーは、コニーボ・インディアンのシャーマンのもとで、初めてアヤワスカを体験した時、死にそうになるほどの、深い変性意識状態に入りました。

その時の意識を自己分析して、4つの層があったと書いています。

最上位にあったのは、観察者兼司令官の意識です。
傍観者であり、深層意識からあふれるイメージを認識していた純粋な意識です。

その下にあった意識は、麻痺した層と表現しています。
多分、言語的、合理的な意識でしょう。

3つめの層は、鳥頭の人間が乗り、ハーナーの魂を運ぶ魂の船などのヴィジョンを生み出した源となる層です。

4つめの層は、死につつある者と死者だけが知る秘密が開示されるとされる層です。
ハーナーは、巨大な爬虫類のような生き物が現れ、彼らは、天から逃げてきた存在であり、地上のすべての生命に潜む支配者であると言うヴィジョンを体験しましたが、これはこの層が生み出したものです。

ハーナーは、シャーマンから、初めての体験でこれほどの深いヴィジョンを見る人は珍しいので、ハーナーは立派なシャーマンになれると言われました。


<地下世界へのトリップ>

ハーナーの「コア・シャーマニズム」では、ドラム、ガラガラ、「パワー・ソング」、ダンスによって「シャーマン的意識状態」になって、異世界にトリップします。

ドラムは、BPM210程度のドラム連打を叩いてもらうか、あらかじめ録音したものを流します。
ガラガラは高い音で、補助的な意味があります。

10分ほどドラムを連打した後、帰りの合図のドラムを鳴らし、また、連打に戻ります。
最後に地上に帰ってくると、終わりの合図のドラムを鳴らします。

地下世界へは、地上に開いた穴や泉などから、あるいは、そういったものをイメージして、そこからトンネルを通って地下世界へ行きます。
トンネルへの入り口は、自分が実感を得られるものなら、何でも構いません。

トンネルに障害物があれば、通れる隙間や迂回路などを探して通ります。

最初は、トンネルの先に何があるかを確認して帰ってくるだけにします。


<パワー・アニマルとそれを取り戻す旅>

ハーナーによれば、「守護霊(ガーディアン・スピリット)」は、通常、動物の姿をしていて、それを「パワー・アニマル」と呼びます。

「パワー・アニマル」は、他に「保護霊(シベリアで)」、「ナワール(メキシコ、グアテマラで)」、「アシスタント・トーテム(オーストラリアで)」、「使い魔(ヨーロッパで)」などと呼ばれます。

「パワー・アニマル」がいなくなると、その人は重病になったり、中長期的に体調が悪くなります。
その場合、地下世界に「パワー・アニマル」を取り戻しに行きます。
患者のために行くこともあれば、自分のために行くこともあります。

また、「パワー・アニマル」は、人に力や能力を与えてくれる存在ですが、シャーマンの「パワー・アニマル」への変容の力も与えてくれます。

「パワー・アニマル」を取り戻す旅は、次のような次第で行います。

1 シャーマン的意識状態に入り、患者の横に体をひっつけて寝転ぶ
2 トンネルを通って地下世界に行く
3 地下世界でパワー・アニマルを見つける
4 パワー・アニマルを見つけたら胸に引き寄せて、地上に連れて帰る
5 パワー・アニマルを患者の胸と後頭部に吹き入れる
6 患者はその動物のダンスを行う

地下世界へのトンネルの途中で、哺乳類以外の動物と出会った場合は、接触は避けなければいけません。

地下世界で、「パワー・アニマル」は異なった角度で少なくとも4回現れるといいます。
「パワー・アニマル」は哺乳類以外に、鳥、蛇、爬虫類、魚などの姿をしているかもしれません。

最後に行うダンスは、患者とパワー・アニマルのつながりを作って、定着してもらうためのものです。

また、患者に対して、遠隔で治療を行うこともできます。
これは、自分の「パワー・アニマル」の力を、患者の「パワー・アニマル」に送ってダンスさせる、ことによって行います。
つまり、直接に力を送るのではなく、二人の「パワー・アニマル」を介して、力づけるのです。


<パワー・アニマルとダンス、助言>

ハーナーによれば、「パワー・アニマル」は、人間の体内にいますが、周りを動き回ることもあります。
また、数年すると、自然にいなくなってしまうので、そうなると、新しい種類の「パワー・アニマル」を捕まえる必要があります。

人が持てる「パワー・アニマル」は、一つとは限らず、ヒバロ・インディアンは同時に2つ持てると言います。

「パワー・アニマル」は、自分自身で定期的に呼び出して、ダンスを捧げる必要があります。
それによって、「パワー・アニマル」を自分の中に留めることができます。

これは以下の次第で行います。

1 東でガラガラを振って、昇る太陽を念じる
2 東西南北でガラガラを振って動物を念じる
3 ダンスをパワー・アニマルに捧げる
4 ガラガラを振って歩き回り、動物になってシャーマン的意識状態に入る
5 早いテンポで踊る
6 踊りをやめて、パワー・アニマルが体の中に留まるように祈願する

「パワー・アニマル」には、個人的な諸問題や、病気の原因と治療法などについて、相談をして、助言をもらうことができます。

相談しに行く場合は、「パワー・アニマル」は、トンネルの中か、トンネルを出たところにいます。


<スピリット・ヘルパーと病気治療>

ハーナーのコア・シャーマニズムでは、邪悪な霊が取り付いていることによって起こる病気を治療するのは、難易度が高く、専門的なシャーマンのレベルのでないとできません。

この治療に必要となるのが「スピリット・ヘルパー(援助霊)」です。
シャーマンは、複数の「スピリット・ヘルパー」を持っていなければいけません。

「スピリット・ヘルパー」は、黒魔術で、邪悪な霊として使うこともできます。
そのため、「スピリット・ヘルパー」は、「呪術用の矢(ツェンツァク)」とも呼ばれます。

「スピリット・ヘルパー」は、「日常的リアリティ」では、多くは野生の植物で、「パワー・オブジェクト」と呼ばれます。
ですが、「非日常的リアリティ」では、動物や昆虫、場合によっては無生物の姿をしています。

「スピリット・ヘルパー」は、日頃から収集しておきます。

例えば、まず、これはと思う植物があれば、その植物に謝ってから一部を摘んで食べます。それとは別に2つを摘み取って、メディスン・バッグに入れて持ち帰ります。

その夜に、「シャーマン的意識状態」になって、その植物を見つけ、「スピリット・ヘルパー」としての「非日常的リアリティ」での本当の姿になるまで待ちます。
そして、それを、また、口に入れて食べます。

非日常的な姿が、クモ、ミツバチ、スズメバチ、蛇である「スピリット・ヘルパー」は、強力なので必須です。

実際の治療法は、次のような次第で行います。

1    患者に侵入した邪霊の姿を確認する
:まず、パワー・ソングを歌ってスピリット・ヘルパーに警戒体勢を取らせる
そして、シャーマン的意識状態でトンネルに入り邪霊の姿(あきらかに邪悪な姿で、歯がむき出しにしたような昆虫、爬虫類、魚など)を見つける

2 邪悪な霊の居場所を特定する
:シャーマン的意識状態になって、患者の体を透視(霊視)し、同時に、手をかざしてその波動を感じて特定する

3 スピリット・ヘルパーの準備
:邪霊と同じ種類のスピリット・ヘルパーのパワー・オブジェクトを2つ口に入れる
そして、スピリット・ヘルパーが口の中に入るのを見る

4 邪霊の吸い出し
:患者の体から口で邪霊を吸い出し、一つめのパワー・オブジェクトに吸着させる
一つ目が吸着を失敗した場合は、もう一つのパワー・オブジェクトが吸着する

5 吸い出した悪霊を入れ物に吐き捨てて、遠くに捨てる

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