ドン・ミゲル・ルイスのトルテック [現代]

ドン・ミゲル・ルイスは、カルロス・カスタネダ同様に、トルテックのシャーマニズムを継承していると主張している、ネオ・シャーマニズムの旗手の一人です。

ルイスの思想は、カスタネダの思想同様に、病気治療より精神の解放を目指すものであり、また、日常的世界観を幻と見るような、非実在論的なシャーマニズム(私の表現では「高等シャーマニズム」)です。

ですが、ルイスはカスタネダと違ってシャーマンの家系に生まれ、その著作で理路整然とした思想に基づいた実践を説いています。

とは言っても、彼の思想がどこまで伝統的で、どこからが現代的な影響のもとにあるもの、彼オリジナルなものであるのか、分かりません。

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<ルイスの歩み>

ドン・ミゲル・ルイスことミゲル・エンジェル・ルイス・マシアスは、1952年、メキシコの片田舎に生まれました。
祖父ドン・レオナルドはナワール(シャーマン)で、母マドレ・サリータはキュランデラ(ヒーラー)でした。

彼は医学部を卒業し、脳神経外科医になりました。
この間、ドン・エステバンという謎の呪術師からも学びました。

ですが、致命的な自動車事故にあって人生観が変わり、1980年から母の力を借りて先祖の教えを学ぶようになりました。
また、本人によれば、変性意識の中で世界の諸宗教を学んだそうです。

そして、1988年にテオティワカンでヴィジョンを得て、トルテックの伝統的な恐怖を解き放つプロセスを発見したそうです。
彼によれば、テオティワカンは、目覚めのために設計されたセンターでした。
テオティワカンの死者の通りは、恐怖を手放し、死への準備のプロセスを表現していて、死の川を渡ることから始まり、最後に、太陽のピラミッドで、自分の意図と太陽の意図を合一させるのです。

1997年に、アーティストのネルソン・メアリー・キャロルがルイスの教えを編集してまとめた「恐怖を越えて」、続いて、ルイスの最初の著作「四つの約束」が出版されました。
後者は、短くて分かりやすかったこともあって、アメリカの600万部のベストセラーとなり、一躍、有名人となりました。

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その後、ルイスは、「愛の選択」(1999)、「四つの約束コンパニオンブック」(2000)、「火の環」(2001)を矢継早に出版。

ですが、ルイスは、2002年に致命的な心臓発作を起こしました。
そして、自分の血統を息子のドン・ホセ・ルイスに引き渡しました。

ルイスは、その後も、「パラダイス・リゲイン」(2004)、「五つの約束」(2010、息子のホセ、ジャネット・ミルズとの共著)などの著作を出版しました。

そして、2010年、ルイスはロサンゼルスの病院で心臓移植を受け、現在はネバダ州に住んでいます。

もう一人の息子のドン・ミゲル・ルイス・ジュニアも、父を継承して活動しています。


<トルテック>

ルイスは、「トルテック」という言葉は、国家や種族を示す言葉ではなく、「知識を持つ者」という意味だと言います。
そして、その師のことを「ナワール」と呼ぶのだと。

「トルテック」はかつてテオティワカンにいて、その後、様々な流派が継承されていて、ルイス自身は、「イーグル・ナイト派」に属しているのだと言います。

かつて、第5太陽期という時代に、トルテックを率いたスモーキー・ミラーが、テオティワカンの太陽のピラミッドの地下にある洞窟に入り、自分達は皆、夢を見ているのだという教えを説きました。
その後、テオティワカンは北方からの侵入を受け、トルテックはトゥーラ(トルテカ)に逃亡しました。
トルテックの高僧は、ケツァルコアトル(ナワールの象徴)とスモーキー・ミラー(トナールの象徴)の二人から構成されました。

ルイスは、1992年に太陽光線の変化に気づき、第6太陽期が始まったと考えました。


ルイスは、あるがままの自分を受け入れる「愛」の思想をベースにして、精神の解放を目指すことを説きます。

ルイスの使う概念は、少し意味は違いますが、その多くがカスタネダと共通しています。
その中のどれが共通するトルテックの伝統に基づくものであり、どれがカスタネダからの影響なのか、分かりません。
カスタネダの影響があるとしたら、ルイスはそれを自分流に解釈しています。

ですが、ルイスは、カスタネダと違って、霊視やテレポート、エネルギー・フィールドや「集合点」の移動、明晰夢としての「夢見」の技法については、ほとんど説きません。


<宇宙論・人間論>

まず、「四つの約束」、「恐怖を越えて」を中心にして、ルイスの宇宙論、人間論を簡単にまとめます。

宇宙の存在はすべて、神の顕現であり、「光」で作られている一つの生命であり、「光」は生命の使者です。

星は「トナール」と呼ばれ、星間の光は「ナワール」と呼ばれます。
両者の空間を作っているのが「生命」であり、これは「力」であり、「意図」とも呼ばれます。
「生命」は「トナール」と「ナワール」の組み合わせで出来ています。

人間は太陽の子であり、太陽は人類に進化上の変化を引き起こすためのメッセージを送る存在です。

人間の知覚は、「光」を感受している「光」です。
ですが、物質は「光」を反射する「鏡」であり、「光」によってイメージ、幻影が作り出されます。
「夢」は「鏡」を覆う「煙」や「霧」の壁のような存在です。
人間は誰もが「夢」を見ていて、そのことに気づいていません。
人間は「煙に覆われた鏡」なのです。

人間は、他の人間から与えられた「夢」に「合意」してそれを受け入れます。
こうして「信念システム」が生まれ、人間は「飼い馴らし」の状態になります。

「信念システム」は、人間の心を支配する「法の書(地獄の書)」です。
人間の心の中には、これによって自分を裁く「裁判官」がいます。
そして、その有罪判決を受け取り、罪、恥、責めの意識、恐怖の感情を持つ「犠牲者」がいます。
「犠牲者」は「人身御供」であるとも言えます。

これら3つが「パラサイト(寄生虫)」を構成しています。
「パラサイト」は、エーテル・エネルギーである恐怖・怒り・悲しみなどの感情を食料としていて、「恐怖の夢」、「地獄の夢」を作り出します。
その混乱した夢は、「ミトーテ」とも呼びます。

この状態から解放されるには、「合意」に抗する新しい「約束」をすることが必要です。
これによって、「恐怖の夢」を、新しい「愛の夢」に作り変えることができます。

「約束」を実行する人間を「戦士」、「狩人」と呼びます。
「戦士=狩人」は、「愛」に基づく新しい「合意」によって、「パラサイト」という獲物を追跡して、それと戦う存在です。

「パラサイト」は「盟友」とも呼ばれますが、彼らに勝つことができると、彼らは本当の「盟友」になります。


<五つの約束>

ルイスは、「四つの約束」で精神の解放のための4つの原則(約束)を示し、後の「五つの約束」では、一つ増やしました。

1 正しく言葉を使う
2 何ごとも個人的に受け取らない 
3 思い込みをしない
4 つねに全力を尽くす
5 疑い深くある、しかし、耳を傾ける

1は、言葉は創造を行う魔術的な存在なので、自分を裁く方向ではなく、あるがままに肯定し、それを愛する方向で言葉を使うという約束です。
自分を呪う言葉を使わないことによって「黒魔術師」から「白魔術師」になれます。

2は、他人が自分を批判しても、それは彼らの問題(合意)であって、自分には関係ないと思う約束です。
批判は自分の心の中から来る言葉であっても同じです。
それは、実際には外部(パラサイト)から来る声なのです。

これを守ることによって、誰にも傷つけられずに、また、誰にも愛していると言うことができます。

3は、特に他人の気持ちに関して、思い込みをしないという約束です。
コミュニケーションを取って確認することで、思い込みをなくすことが重要です。

4は、約束を常に実行することであって、それによって、今、ここを生きることです。

5は、言葉の背後の真実を見て、自分自身も含めて何も信じなという約束です。

言葉を越えた知識は、信じる必要がないもので、「沈黙の知識」と呼ばれます。
それはあるがままの真実を「観る」ことであり、自分自身を「観る」ことです。


<3つの技術・ステップ>

「戦士」となり「約束」を実行するためには、3つの技術、ステップが必要です。

1 気づき :思い出し、自覚する
2 変容  :夢を変える技術、アクション・リアクションを変える
3 愛・意図:死を受け入れて、あるがままを肯定する

カスタネダとの比較で言えば、これらはカスタネダの言う「忍び寄り(ストーキング)」、「夢見」、「意図」の3組に対応させることができます。


1の「気づき」の技術は、古い「合意」が自分の中で働く度に、それによって恐怖が起こる度に、それに気づくことです。
この気づきを「第二の注意」と呼びます。

そのためには、自分の中の「アクション-リアクション」に気づく必要があります。
例えば、古い合意に基づいて自分を裁くことが「アクション」です。
それに基づいて、自分自身を罪人と見做すことが「リアクション」です。

また、この「気づき」には、各自が内部に持っている、言葉以前の「沈黙の知識」への気づきという意味もあります。


2の「変容」の技術は、「パラサイト」が喜ぶような、恐怖の感情を止めることです。

そして、新しい約束に基づいて、あるがままの自分を取り戻し、「恐怖の夢」を新しい「愛の夢」に作り変えることです。


3の「意図(愛)」の技術は、象徴的な死によって「パラサイト」を殺すことです。
これは、「死のイニシエーション」とも呼ばれ、「死の天使」に直面して降伏し、無執着の状態になることです。

「意図」というのは、宇宙(神)の「生命」、「力」のことであり、「愛」でもあります。
「意図」の技術は、神と一つになり、どの行為の中にも神が存在するようになることを目指します。

「意図」の技術は「愛」の技術です。
ルイスは、「愛の選択」で、「愛」の性質について、義務がない、期待がない、尊敬に基づく、同情しない、責任を持つ、常に優しい、無条件である、と書いています。

「身体的養生法」と表現される身体に関する瞑想的方法も、「愛」の技術でしょう。
この方法の中心は、生きている喜びを感じ、自分の肉体に対して感謝し、献身の愛を捧げます。

また、体の各部分に溜まった感情を解放し、それによって、チャクラを流れるエネルギーを調和させます。

そして、「火の呼吸法」と呼ばれる呼吸法では、吸気と共に、空気が太陽→松果腺→脊髄基底部→地球と降りてくると観想します。
そして、これに地球が答えて、呼気と共に、地球→脊髄基底部→松果腺→太陽と戻っていくと観想します。

他人に関しては、たとえ自分を傷つけた者でも「許す」ことが重要です。
「許す」ことは、自分の心を癒やすことにもなります。


<変容のための2つの方法>

夢を変容させるための方法が2つあります。
ルイスは、それぞれの方法を、上記の特定のステップに関連させて語ることがありますが、実際にはそれぞれの方法を完全に行えば、そこに3つのステップがあるハズです。

1 棚卸し(要約):夢見の技術、イーグルの技術、過去に関わる
2 ストーキング :生きる技術、ジャガーの技術、現在に関わる


1の「棚卸し」は、過去の記憶を思い出して、再体験する方法です。
この点では、「気づき」の技術ですが、それだけではなく、体験を捉え直して変容させることが必要です。

「棚卸し」では、自分のすべての「合意」、「信念」を調べることになります。
この作業は、比喩的に「砂漠に行って悪魔と対面する」とも表現されます。

ルイスの「棚卸し」は、カスタネダが言う「反復」に対応する方法です。
カスタネダの方法と同じように 知人一人ごとにリストアップして思い出します。

また、カスタネダ同様に、呼吸法を使います。
「愛」を思い浮かべて呼吸をしながら、記憶を捉え直し、心の傷を清めます。
こうして、未処理になっていた感情のひっかかりを、見直して解放するのです。

「棚卸し」に慣れると、これを自動的に行えるようになり、さらには、夢の中でも行えるようになります。


2の「ストーキング」は、常に自分の思考、行動、反応に対して自覚し、それらを変えていくという、現在に関わる方法です。

これには2段階があって、まず、個人の夢を対象にし、次に、社会や人間全体の夢(惑星の夢)を対象にします。

「ストーキング」は、カスタネダの文脈では「忍び寄り」と訳されているものです。
カスタネダはこの言葉を多義的に使っていますが、ルイスは、一つの意味に明確化し、彼の思想の中に位置づけています。


<3つの注意の夢>

ルイスの方法は、夢を変容させていきますが、夢を3つの段階で区別します。

・第一の注意の夢:犠牲者の夢(地獄の夢)
・第二の注意の夢:戦士の夢(戦いの夢)
・第三の注意の夢:達人の夢(天国の夢)

「第一の注意の夢」は、普通の人間が昼夜に見ている夢(世界認識)であり、自分が夢見ていることに気づかずに見る夢です。

「第二の注意の夢」は、自分の夢を自覚して、それを変える戦いの夢、変えた新たな夢です。

「第三の注意の夢」は、戦い終えて、あるがままの自分を受け入れた夢です。
これは「愛と喜びの夢」であり、神・意図・宇宙に従った夢です。
これによって、自分が宇宙と一体であることに気づきます。


<心臓の炎の瞑想>

ルイスによれば、「ナワール(シャーマンの師)」は、意志の内部に、太陽の複製を発達させる人間です。
その太陽は「黒い太陽」と呼ばれます。

また、「四つの約束」の最後に、「愛の祈り」という瞑想のヴィジョンが掲載されていて、その中に以下のような部分があります。

それによれば、頭から美しい光を放つ一人の老人が、胸を開いて「心臓」から美しい「炎」を取り出して、私の「心臓」に入れました。
その「炎」は彼の「愛」だったので、私は「愛」を感じました。
その「炎」は燃え上がり、「愛」は成長して、私はすべてを愛し、愛されると感じるようになりました。

マヤ=トルテカ系には、第二の「神化された心臓」を作るという世界観があります。
また、主神のケツァルコアトルは、自分の心臓を燃やして金星になりました。
上記の祈りの瞑想ヴィジョンには、こういった伝統が取り込まれているようです。


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