ピタゴラス教団と輪廻思想 [古代ギリシャ]

イオニアの多くの哲学者が自然を問題としたのに対して、個人の内面を見つめる傾向が強いのが、輪廻思想をベースに個人の霊魂の救済を問題にするオルフェウス派とその流れにある哲学者達であるピタゴラス、エンペドクレス、プラトンらです。

輪廻思想はインド由来のものかもしれません。
ですが、彼らは天体を神的なものとして重視し、人間の霊魂も星の世界から堕落してきたと考えました。
ここにはバビロニアの思想の影響があるのかもしれません。
 
オルフェウス派やその流れにある哲学者ピタゴラスは、霊魂不滅と輪廻思想をベースに、個人の霊魂を浄化し、救うことを目的としていました。
哲学においては、ピタゴラスはペレキュデスから輪廻思想を継承したとも言われています。

ピタゴラスは、エフェソスの沖にあるサモス島出身で、南イタリアのクロトンで共同体を作っていました。
彼は、エジプトやペルシャなどを旅して秘儀に参入したとか、エジプト人から幾何学、フェニキア人から数論と計算術、カルデア人から天文学を学んだとか、ゾロアスターから光と闇の2元論を学んだ、などと言われていますが、本当のところは分かりません。

ピタゴラスの教説は本来、秘密なのですが、ピタゴラス派のピロラオスの著作を通して知られています。

ピタゴラス派の根本哲学は、「限(奇)」と「無限(偶)」の2元論です。
前者は形相、後者は質料の原理です。

また、「数」を原理としますが、それらは、形相、質料の両方の原理とされます。
アリストテレスによれば、プラトンにとっては「数」は事物から超越する実在であるのに対して、ピタゴラス派にとっては内在するものです。

ピタゴラスは、インド思想同様に霊魂が人間だけでなく、様々な生物に転生していくと考えました。
これは、人間や神々が自らの身分を守るべきだとする「モイラ」の考えとはまったく違い、様々な存在様式を通過しながら、正しい行いを行うことで至高の神に復帰するべきとする考えなのです。

これは、ヘラクレイトスの万物が流転するという考えと同じように、霊魂が流転するのです。
運命=「モイラ」ではなく、正義=「ディケー」を中心とする考え方です。
 
ピタゴラスは浄化のために音楽的な調和、数学的な調和を重視しました。
数学的な真理を「観照(直観)」することが霊魂を浄化する方法でした。

また、ピタゴラスはオルペウス派と同様に星の世界を神々の世界として信仰しました。
星の世界は数学的な調和に満ちているのです。
 
ピタゴラス主義の思想に関しては、後のプラトンの「不文の教説とピタゴラス主義」でも触れます。


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