シーア派とイマーム [イスラム教]

イスラム教は教祖ムハンマド(マホメット)の後継者争いによって様々な教派に分かれていきました。
そして、イスラム教のイラン文化圏への拡大は、ペルシャの民族宗教としてのマズダ教の衰退と、世界宗教としてのミスラ教・マニ教のイスラム化、逆に言えばイスラム教のカルデア・ペルシャ化という結果を導きました。
そのため、イランの国教となったイスラム教の「シーア派」には、ミスラ・マニ教の影響を見ることができます。

ムハンマドはキリスト教のイエスのような神ではなく預言者です。
また、ムハンマドは自分が最後の預言者であると宣言していたので、イスラム教の中では誰も彼の後で預言者を自称することができません。
「イスラム」とはムハンマドによって開かれた、預言者単位での最後の周期なのです。

初めのうちは、ムハンマドの出身部族であるクライシュ族の中で選挙によってムハンマドの後継者が選ばれました。
この後継者は「カリフ」と呼ばれ、政治的な性質を持っていました。カリフを中心にした律法主義的な多数派がスンニ派です。
スンニ派はシリアを拠点にしたウマイア朝を起こし、その後も多くのイスラム王朝を支配してきました。

ですが、ムハンマドの娘婿アリーを支持して、後継者をより霊的な系統や血統によって選ぶことを主張する一派が現われました。
この一派と、ミスラ教・マニ教をベースにして秘教的なイスラム教の教義「グルウウ」が結びついて、バニロニア、南イラクを拠点にしたシーア派が生まれました。
シーア派はファーティマ朝、ブワイフ朝から、16世紀ペルシャのサファビー朝や現在のイランの国教となっています。

シーア派はミスラ・マニ教だけでなく、マンダ教、ユダヤ教メタトロン派、キリスト教ネストリウス派など様々な秘教を結集しました。
そして、当然ながら、ミスラ教・マニ教が盛んだったクルド地方に伝教を行いましたが、この時、シーア派は「サビアン教」という名前で、つまり、カルデアの一神教として伝教を行いました。

シーア派の最大の特徴は、「イマーム=アル・マフディー信仰」です。
アリーの後継者は外的な啓示を受ける預言者ではなく、内的な啓示を受けて預言者の系譜を受け継ぐ者=「イマーム」(本来的には先導者・指導者の意味)であると考えられました。
シーア派では『クルアーン(コーラン)』や啓示、宗教儀式には表面的な意味とは別に内面的な秘密の意味、奥義あると考えてこれを重視しました。
シーア派は自らイスラム教の秘教(仏教における密教)であると考えているのです。

イマームは預言者がもたらした啓示の真の意味を解き明かす存在なのです。
秘教的な智恵を体現するイマームは、外面的な啓示を伝える預言者よりも実質的に重要な存在であるとも考えられたのです。
スンニ派ではムハンマンドを含めて預言者があくまでも人間でしかないのに対して、シーア派はイマームや預言者の概念を神的なものに高めていきました。

シーア派では次のように考えます。
宇宙創造の原初、神の光のみが存在し、それがまずムハンマドの姿に凝縮します。
これを「ムハンマンド的光(ムハンマド的真理)」と呼びます。
これは原人間、神的人間、「真のアダム」であって、永遠の預言でもあり、また、『ヨハネ福音書』の「ロゴス」であり、第1知性体なのです。
神はこの人間に神の秘密を委託したのです。

この「ムハンマド的光」が外的光と内的光に分かれます。
外的光から預言者と預言が、内的光からイマームと預言の内的意味が現われます。
この本来のイマームや預言者は霊的な次元の存在です。
この霊的な次元のイマームが受肉して地上の人間として現われるのです。

ですから、イマームの本質は霊的な次元(光の粒子の世界)にあって、原人間であると同時に預言の内的な意味を理解する存在なのです。
ミスラ教の伝統に照らすと、最初の神の光が両性具有のズルワン、ムハンマド的光がミスラ、イマームがミスラの分霊・化身です。
シーア派では神ではなく、このイマーム=アル・マフディーと合一することを目指します。

神の光
ムハンマド的光=真のアダム=第1知性体
外的光
内的光
預言者・預言
イマーム・預言の奥義
  
アル・マフディー=カーイム(救世主・聖霊)


イマームは一つの周期の中で何人か現れます。
最初にあらわれるイマームは「アサース」と呼ばれ、新しい時代の秘儀を体系化する存在です。
アリーはアサースであって、新しい秘儀を作った存在とされたのです。

『クルアーン』では終末に白馬に乗ってイエスとともに現れる救世主を「アル・マフディー」と呼びます。
もちろんアル・マフディーはミスラのイスラム・ヴァージョンですが、シーア派ではこれは最後のイマーム(1つの周期の最後ではなく、最後の周期のイマーム)なのです。
この終末に現れるイマームを「時の主(カーイム・ッザマーン)」と言います。ザマーンは古代ペルシャ語のズルワンが訛ったもので、「時の主」はミスラを意味します。

「時の主」はアリーの再臨であると言われています。
 
 


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