ヴィシュヌ・プラーナの宇宙論:第一次創造と空間 [古代インド]

宇宙の具体的な階層構造に関して、詳細な宇宙論を述べているヒンドゥー教(ヴィシュヌ教パンチャラートラ派)の聖典「ヴィシュヌ・プラーナ」の宇宙論、その創造と宇宙の構造を紹介しましょう。
ここにも、オリエントの宇宙論の影響が感じられます。


まず、ヴィシュヌ神=ブラフマンが目覚めると、化身としてブラフマー神となり、そして、「純粋精神(プルシャ)」の形態になります。
次に、順次、「未展開物者(アヴィヤクタ)」=「根本物質(プラクリティ)」→「展開者(ヴィヤクタ)」→「時間(カーラ)」の形態になります。

そして、ブラフマーは「プルシャ」と「プラクリティ」の中に入って、まず、「思惟(ブッディ)」を生みます。
これは「大いなるもの(マハット)」とも呼ばれます。

マハットは、まず、「自我(アハンカーラ)」を生みます。
「アハンカーラ」は、「純質(サットヴァ)」の影響下に「心(マナス)」とインドラ、ミトラなどの10神々を生みます。
また、「激質(ラジャス)」の影響下に10の器官を生みます。
また、「暗質(タマス)」の影響下に、5つの「微細元素(タンマートラ)」と5つの「粗大元素(マハーブータ)」と生みます。

マハットは、次に、7層の存在に囲まれる「宇宙卵(地)」を生み出します。
そして、不可視だったヴィシュヌは、可視のブラフマー神となり、大洋の上に漂う卵の上にやすらぎます。

7層の世界は、上から「根本物質(プラクリティ)」、「思惟器官(ブッディ)」に相当する「大いなもの(マハット)」、自我意識「アハンカーラ」に相当する「元素の根源(ブータ・アディ)」、そして「4元素(虚空、風、火、水)」です。
「宇宙卵」は多数存在します。

「宇宙卵」の中の宇宙も大きく分けて7層に分けられます。

上にはまず、神々の住む4つの天上世界があります。
不死の住人が住む「サティヤ・ローカ」、ヴァイプロージャと呼ばれる神々が住む「タポー・ローカ」、ブラフマンの子供たちが住む「ジャナ・ローカ」、ヤマたちが住む「マハル・ローカ」です。

そして、次に「天界(スヴァル・ローカ)」、「空界(ブヴァル・ローカ)」、「地界(ブール・ローカ)」です。
「天界(天球)」は10層で構成されています。
上から順に「北極星/大熊座(7聖仙)/土星/木星/火星/金星/水星/星宿(オリエントの12宮に相当するもの)/月/太陽」です。
「空界」はオリエントの月下界に相当する天球の下の空間です。
「地界」は「地上」、7層の「地下」、28の地獄「地獄」を含みます。

また、地上の中心には「メール山」と呼ばれる巨大な黄金の山があります。
メール山の山頂にはブラフマー神の大宮殿があり、その八方には神々がいて世界を守護しています。
メール山の周辺には巨大な「ジャンプ樹」が生えていて、その果実からは不死の霊液を流れます。
また、ブラフマー神の宮殿からガンジス川が四方に向かって流れていきます。
人間(インド人)が住んでいるのは「メール山」の南方の国で、唯一楽園ではない場所です。

これらはシャーマニズム神話の普遍的な要素です。
ですが、「世界山」や「世界樹」は古代ペルシャの宇宙論にもありますから、古代アーリア以来伝えられていたものか、後世にペルシャから伝わったものかもしれません。

以上の宇宙創造は、ブラフマー神が誕生する時の素材的な創造であり、「第一次創造(サルガ)」とでも呼ぶべきものです。
ブラフマー神が一日の始まりに行う、人間世界などの世界の「第二次創造(プラティ・サルガ)」については別項をご参照ください。
 

(ヴィシュヌ・プラーナの宇宙構造)
根本物質(プラクリティ)
=未展開者(アヴィヤクタ)
大いなるもの(マハット)
=思惟(ブッディ)
元素の初源(ブータ・アーディ)
=自我(アハンカーラ)
虚空
地(宇宙卵)7層
4天上界
・サティヤ・ローカ
・タポー・ローカ
・ジャナ・ローカ
・マハル・ローカ
(天界)
・北極星
・大熊座
・土星
・木星
・火星
・金星
・水星
・星宿(恒星天)
・月
・太陽
空界
地界
・地上
・7層の地下
 28の地獄

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。