シュタイナーの宇宙進化論1(惑星紀) [近代神智学・人智学]

シュタイナーは、1904-8年に連載した「アカシャ年代記より」、1907年の講演「薔薇十字会の神智学」、1910年の「神秘学概論」などで、宇宙進化論、人類進化論を語りました。

これは、ブラヴァツキー夫人の神智学の同論を継承しながら、シュタイナー自身の霊視によって修正したものです。

堕天使論やキリスト論にも、大きな違いが生まれています。


<進化と人間>

シュタイナーの場合も、「人間」には2つの意味があります。

1つは、進化の段階としての「人間(人間段階)」で、これは、生命が「自我」、「対象意識」を獲得した段階です。
もう一つは、現在の「人間」の過去、及び、未来の存在です。

現在の「人間」は、過去には動物段階の人間である「人間動物」でした。
未来には、天使段階に進化して「人間天使」になります。
同様に、現在の「天使」は、過去には「人間段階」の「天使人間」でした。

「自我」を獲得した存在は、「アストラル体」、「エーテル体」、「物質体」を順次、「霊我」、「生命霊」、「霊人」に変えていきます。
「体」を「霊」に変えることができるようになれば、自分自身で「体」を作ることができるようになります。
シュタイナーは、作った「体」を他者に与えることを「供犠」と呼びます。

このように、被造物から創造者に変わることが「進化」です。
「人間段階」は、被造物から創造者に変わる転換点です。
そして、諸「天使」の位階の存在は、創造者の段階にまで変わった存在です。

ですが、「人間」は、他の「人間段階」に達した存在とは異なる点があります。
「ルツィフェル」を通して、「自由」を得た存在という点です。


<意識・生命・形態の周期>

宇宙の歴史は、

 7つの惑星紀(意識状態)×7つの周(生命状態)×7つの球(形態状態)

という三重の周期で進展します。

シュタイナーは、神智学の宇宙進化論を継承していますが、「紀(連鎖)」を「意識状態」、「周(ラウンド)」を「生命状態」、「球(天体)」を「形態状態」として捉え直しました。

いずれも7段階で構成されていますが、それは、我々には前後の3つの時代しか見えないために、7段階しか認識できないのす。
現在の我々は、4段階目の4段階の4段階目、つまり、「地球紀」の覚醒意識状態、「鉱物界」の生命状態、「物質的」な形態状態にあります。


<意識状態(惑星紀)>

まず、「意識状態(惑星紀)」が7段階あります。
それぞれの本質は、「意識状態」の進化であり、それは目標として形成されるものと対応します。
また、天体を構成する元素とも対応しています。

(惑星紀)  (元素) (意識状態)       (形成されるもの)
1 土星紀   :熱 :昏睡(鉱物)         :肉体
2 太陽紀   :空気:睡眠(植物)         :エーテル体 
3 月紀    :水 :夢(形象意識・動物)     :アストラル体
4 地球紀   :  :覚醒(対象意識)       :自我
5 木星紀   :  :自覚した夢(心魂的意識)   :霊我(マナス)
6 金星紀   :  :自覚した睡眠(霊感的意識)  :生命霊(ブッディ)
7 ヴァルカン紀:  :自覚した昏睡(直観・霊的意識):霊人(アートマ)

4の「地球紀」は、前半が「火星紀」、後半が「水星紀」となります。

紀の名前は天体になっていて、基本的に曜日の順になっています。
ですが、これらは現在の天体とは別で、地球の過去の姿、前世の姿です。
それぞれの紀において、最初に天体は1つにまとまっていて、途中で諸天体を分離します。

最初の「土星紀」は「熱」で出きた時代ですが、次の紀になるに従って、「熱」は凝縮して「空気」、「水」、「土」を新たに生んでいきますが、同時に精妙化して「光」、「音」、「生命」も生んでいきます。

また、最初の「土星紀」は人間の「物質体」が作り育てられますが、同時に最後に「霊人(アートマ)」の萌芽も作られます。
次の紀になるに従って、新しく「エーテル体」、「アストラル体」、「自我」が作り育てられますが、同時に最後に「生命霊(ブッディ)」、「霊我(マナス)」の萌芽も作られます。

ただ、各紀でそれぞれの体が作られるとは言っても、現在のそれとは大きく異なります。
また、「木星紀」には今の鉱物界がなくなり、「金星紀」は植物界がなくなり、「ヴァルカン紀」は動物界がなくなります。

最初に、「物質体」、「エーテル体」、「アストラル体」、「自我」を作るのは、人間より高次存在の「意志霊」、「叡智霊」、「運動霊」、「形態霊」ですが、その後は、順次、下の位階の霊が働きかけていきます。

(惑星紀) (元素) (形成されるもの) (形成する霊)
1 土星紀:熱   :物質体→霊人萌芽   :意志霊
2 太陽紀:空気→光:エーテル体→生命霊萌芽:叡智霊
3 月紀 :水→音 :アストラル体→霊我萌芽:運動霊
4 地球紀:土→生命:自我         :形態霊

人間の進化は人間より高次の霊的存在の働きかけによりますが、それらの9つの位階と、キリスト教における天使の対応は、下記の通りです。
シュタイナーは、偽ディオニュソス・アレオパギタ「天上位階論」の天使の9位階を継承しています。
アレオパギタは、新プラトン主義の影響を受けています。

第1ヒエラルキア     
1 愛の霊    :セラフィム(熾天使)         
2 調和霊    :ケルビム(智天使)       
3 意志霊    :トローネ(座天使)
第2ヒエラルキア     
4 叡智霊    :キュリオテテス(主天子)   
5 運動霊    :デュナメイス(力天使)
6 形態霊    :エクスシアイ(能天使)  
第3ヒエラルキア     
7 人格霊(時代霊):アルヒャイ(権天使)
8 火の霊(民族霊):アルヒエンゲロイ(大天使)
9 薄明霊(個人霊):エンゲロイ(天使)

人間は、第10ヒエラルキアであり、「自由霊」とでも表現できる存在です。

以下、上記の霊に関しては単数で記述しますが、基本的に複数です。


<生命状態(周)>

それぞれの惑星紀には、下記のような「生命状態(周)」が7段階あります。

1 第1元素界:純粋に神的・霊的
2 第2元素界:神的・霊的
3 第3元素界:心魂的
4 鉱物界  :物質的
5 植物界  :心魂的
6 動物界  :神的・霊的
7 人間界  :純粋に神的・霊的

「生命状態」は、最初に以前の「意識状態」の時代を繰り返します。
地球紀であれば、最初の3つの「生命状態」で、土星紀、太陽紀、月紀を繰り返します。
第1、2、3元素存在は、それぞれ下降中のメンタル生命、アストラル生命、エーテル生命です。


<形態状態(球)>

さらに、それぞれの周には、以下のような「形態状態(球)」が7段階あります。

1 没形態的(コーザル的):純粋に神的・霊的
2 形態的(メンタル的) :神的・霊的
3 アストラル的     :心魂的
4 物質的        :物質的
5 彫塑的        :心魂的
6 知性的        :神的・霊的
7 元型的        :純粋に神的・霊的

現在の我々は、「地球紀」の、「鉱物界」の生命状態の、「物質的」な形態状態にあります。

以上の「生命状態」と「形態状態」に関しては、あまり詳しく語られません。


<各意識状態(惑星紀)の出来事>

・土星紀

土星紀には、「愛の霊」が新しい太陽系の目標を直観し、「調和霊」がその目標を実現するための構想を練り、「意志霊」が自分の本性から火を天体に流し込みました。
これら第1ヒエラルキア存在は土星の周囲にいて、第2ヒエラルキアの存在は土星内部にいました。
土星は熱体で、「叡智霊」が送ってくる生命を反射していました。
土星紀に人間の意識は昏睡状態でしたが、人格霊が人間段階(覚醒した対象意識)に達していました。


第1期に「意志霊」が、人間の「物質体」の萌芽を流出しました。
人間は卵の形で存在しました。
第2期から第7期までは、「叡智霊」以下の6つの霊が順に人間の「物質体」に働きかけました。

(物質体に働きかけた霊)
1期 意志霊   
2期 叡智霊   
3期 運動霊   
4期 形態霊   
5期 人格霊    
6期 火の霊
7期 薄明霊

大気圏にいた「自我・アストラル体・エーテル体」としての人間が、自らの本質を土星上に投げ入れて発生した表象像から感覚器官の萌芽が形成されました。

第7期には、人間は「霊人」の萌芽を生じさせ、「意志霊」がそこに浸透しました。


・太陽紀

太陽は内では流体で、外に向かって光を放射していました。

人間の「自我・アストラル体」は大気の中にありました。
人間の肉体は、感覚器官が発達して成長・生殖器官になり、「エーテル体」を受け入れる準備が整いました。

第2期に「叡智霊」が人間の「エーテル体」の萌芽を流出し、人体の動きが叡智に満ちたものになりました。
第3期から第7期には、「運動霊」以下の5つの霊が順に人間の「エーテル体」に働きかけました。

(エーテル体に働きかけた霊)
2期 叡智霊   
3期 運動霊   
4期 形態霊   
5期 人格霊    
6期 火の霊
7期 薄明霊

第4期に「火の霊」が現在の人間の段階(対象意識を持つ段階)にまで進化しました。
彼らを率いていたのは、「キリスト(太陽霊、子、ロゴス)」でした。

第6期には、人間は「生命霊(ブッディ)」を生じさせて、「叡智霊」がそこに浸透しました。
第7期には「生命霊」を「霊人(アートマ)」と結びつけて、生きた「モナド」としました。

また、太陽紀には、「意志霊」が捧げた「供犠」を意図して受け取らない「叡智霊」がいました。
この「供犠」の受け取りの「断念」から「水」が生じて、次の月紀を生み出しました。

そして、太陽紀と月紀の間に、「運動霊」が、特別な進化を促そうとして、「妨害の神々」になって、天使を誘惑しました。
一群の天使がこれに乗って反抗し、「供犠」を横取りして、「ルツィフェル」と呼ばれる存在になりました。


・月紀

太陽が月から分離し、進化した高次の霊的存在は太陽に行き、太陽は恒星となりました。
一方、進化の遅れた存在は月に残りました。
「形態霊」である7人のエロヒムの中の6人は太陽に行き、残りの1人であるヤハヴェは月に行きました。

そして、高次の霊的存在は太陽から月に光を放ちました。
ですが、月では「ルツィフェル」が太陽の影響を受けとらない進化から取り残された、独立した存在になりました。
ただ、これは「調和霊」の計画でした。
これが、後に人間に自由意志を与えるきっかけとなりました。

人間の肉体は、神経組織が作られ、「アストラル体」を受け入れる準備が整いました。

第3期に「運動霊」が人間の「アストラル体」の萌芽を流出しました。
第4期から第7期には、「形態霊」以下の4つの霊が順に人間の「アストラル体」に働きかけました。

(アストラル体に働きかけた霊)
3期 運動霊   
4期 形態霊   
5期 人格霊    
6期 火の霊
7期 薄明霊

第5期には、人間は「霊我(マナス)」の萌芽を生じさせ、「運動霊」がそこに浸透しました。
「霊我」は第6期に「生命霊」と第7期には「霊我」と「モナド」と結びつきました。


・地球紀

人間の肉体には、温血の心臓組織が作られて、「自我」を受肉する準備が整いました。
温血動物、植物、鉱物は、土星期、太陽期、地球期に進化から遅れた存在です。

第3期に、月紀の太陽と月の分離を繰り返します。
第4期に「形態霊」が、人間の「自我」の萌芽を流出しました
第5期から第7期には、「人格霊」以下の3つの霊が順に人間の「自我」に働きかけます。

(自我に働きかける霊的存在)
4期 形態霊   
5期 人格霊    
6期 火の霊
7期 薄明霊


現在の人間が物質界で創造を行うように、木星紀には植物を創造し、金星紀には動物を創造するようになります。
また、未来(ヴァルカン紀?)には、言葉によって人間を作るようになり、無性的存在になります。

地球紀の根幹人種期や文化期については、次項で説明します。


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