川面凡児の禊・鎮魂行法 [日本]


川面凡児の霊魂観」から続くページです。

川面凡児は、「禊行」を復活させたことで知られる古神道の大家です。
その行法は、全国の神社に取り入れられて、神道界に大きな影響を与えました。

このページでは、「禊行」を含む凡児の「鎮魂行法」を紹介します。
この行法は、まったく独特なものであり、神人合一に至る神秘主義的的な行法です。

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<鎮魂行法の祭神>

凡児の実践は、「鎮魂行法」が中心ですが、それには祭祀も伴います。

主要な祭神は、「天之御中主太神」と「大祓戸大神」です。

「天之御中主太神」は、「禊」の神です。
「禊」とは、「霊」の「稜威」を受けるという意味であって、つまり、「霊(み)注ぎ」であり、「水注ぎ」です。

「天之御中主太神」には表裏の神を考えることができます。
分霊である「三霊神(むすひのかみ)」が裏であり、分魂である「三魂神(むすびのかみ)」が表です。

一方、「大祓戸大神」は、罪穢れの元である「禍津毘」を払う「祓」の神です。

凡児は、この神を表裏の16神の総称だと言います。
裏12神は、内から罪穢れを祓い出します。
表4神は、罪穢れを外に祓い去らせます。

表の4神は、「瀬織津比咩神」、「速開津比咩神」、「気吹戸主神」、「速佐須良比咩神」の大祓詞の祓の4神です。

裏の12神は、まず、「生産霊神」、「足産霊神」、「玉留産霊神」の宮中八神殿の3神です。
これは、創造過程を自覚するために祀ります。

次に、「神直霊神」、「大直霊神」、「伊豆能売神」の古事記に記された3神です。
霊魂を根本より自覚、興奮させるために祀ります。

「神直霊神」は、「生霊(いくむすひ)」であり、「大直霊神」は、「三霊神(みむすひのかみ)」の統一体であり、「伊豆能売神」は、その分霊です。
「直霊」が、「八十万魂」を完全に統一すると、「大直霊」になり、「神直霊」となります。

最後に、底・中・上の綿津見の三神、筒之男の三神です。
これらは、伊豆能売の活動の諸相です。


<鎮魂の6行法>

凡児の「鎮魂行法」は、以下のような6段階の行法からなります。
これは「鎮魂の境」に入るための前段階でもあります。
祭神に表裏があったように、行法にも表裏があります。

「鎮魂行法」は、「禍津毘」を排除し、「八十万魂」を完全に主宰統一するために行います。
まずは、「和魂」が「八十万魂」を統一し、やがて、「直霊」が「八十万魂」を統一します。
最終的には、「八十万魂」も含めて、すべてが「神直霊」となります。

1 祓
2 禊
3 振魂
4 雄建(おたけび)
5 雄詰(おころび)
6 息吹(伊吹伊吸)

1の「祓」は、「禍津毘」を振り払って除去するための行法です。

表の意味では、体を振動させて穢れを払い除います。
裏の意味では、「張る霊」と表現され、「直霊」に「息気」を吸い入れて、全身の「八十万魂」を充満させ、全身を膨張・緊張させます。

具体的な方法としては、御幣を振り、大祓戸神の霊威を受けます。
そして、「直霊」に、そして、「八十万魂」に送り、充満させます。

2の「禊」は、1同様の「禍津毘」を払う方法ですが、水を使う点で異なります。

「禊」の前に、体を暖める準備的行として、「鳥船行事」を行う場合もあります。
これは、船を漕ぐ動作を、声を出しながら行うものです。

「禊」は、表の意味では、神の「霊」を自分の「直霊」に注ぎます。
裏の意味では、「祓」によってもまだ残留している穢れ削ぎ(身削ぎ)ます。

具体的な方法としては、身を海川に投じて、「大本体神」の「霊」を受けます。

3の「振魂」は、後で述べる「裏伊吹」と同時に修されるので、「裏伊吹振魂」とも表現されます。

まず、目を閉じて鼻から神の「霊」である「神直霊」を全身の「八十万魂」にまで吸い込み、呼吸を止めます。
続いて、両掌を十字形に組み合わせて、渾身の力を入れて全身を振り動かします。

この時の動作には様々な方法があって、これは初歩的なものです。

4の「雄建(おたけび)」は、姿勢を正して常立神となる行です。

具体的には、「生霊(いくたま)、足霊(たるたま)、玉留霊(ただとどまるたま)、何某常立命」と唱えつつ、天之沼矛(右手の人差し指と中指を伸ばした形)を振り降ろし、直立不動の姿勢を構えます。

5の「雄詰(おころび)」は、「イーエッ」、「エーイッ」の大声(言霊)を発する行ですが、これは、須佐之男命の昇天に備えて天照大神が行った動作とされます。

まず、「イーエッ」とともに、天之沼矛を頭上から左腰に振り下ろして、禍津毘を威伏懲罰します。
続いて、「エーイッ」とともに、天之沼矛を元の位置に上げ戻して、禍津毘を悔悟復活させます。
これを三度行います。

この言霊の発話によって、「八十万魂」の分霊(分派霊:われみ)・分魂(分派魂:われたま)が飛び出します。

裏の方法では、まず、小さい声で「ア・イ・イ・イ」と上に向かって発音し、鼻に息を吸い込みます。
続いて、「ウ・ウ・ウーウッ」と順次発音し、発音ごとに全身に力を込めて、口から徐々に息気を吹き出します。
これを3回繰り返します。

6の「息吹(伊吹伊吸)」は、「息気」を吸収する呼吸法です。

鼻から空気を通して大本体神の「稜威」を吸い込み、全身に充満させ、数分留めてから、口からゆっくり息を吐き出します。
この時、「ウ・ウ・ウ・ウッ」と言いながら全身に力を入れて振動させます。
これを何度も繰り返します。

これは、「魂」全体の「大呼吸」と、「八十万魂」の「少呼吸」を、大から小へ、小から大へ、大だけ、小だけ、それぞれで、両方一体で、の6つの方法で行います。

また、裏の方法は、3の「振魂」のところで「裏伊吹振魂」として記載したものです。

以上の「振魂」から「伊吹」までは、毎朝夕行うべきものとされます。


<鎮魂鳥居の伝>

以上の6つの行法を続けているうちに、徐々に霊魂が浄化、統一されていきます。
この変化は、「鎮魂の境」に入ると表現され、この過程を8段階で捉えます。

そして、この8段階は、順に7つの鳥居をくぐり、本殿に至る過程として表現します。
そのため、これを「鎮魂鳥居の伝」とも呼びます。

この8段階は、長期間の修行の中で、順に達成されるものです。


・第一の鳥居

閉眼で黙想していると、様々な光が現れては消えた後、薄い光明の状態に落ち着きます。
これは「平等一体の境」、「一色一光の鏡」であり、「八十万魂」の不安定な震動が落ち着いた状態です。

この平等の境地は、「荒身魂」の段階のものでしょう。

・第二の鳥居

小豆大の緑の光球が現れて、やがてそれが眼の前で安定するようになります。
次に、そこに鏡に映るように、「奇魂」としての自分の面貌が顕れます。

・第三の鳥居

自分の面貌は、「奇魂」としての自分から、「和魂」としての自分に変わります。
そして、光球は濃い緑になります。

この時、幽界の門に到達し、天狗や仙人と交流することもできるようになります。

・第四の鳥居

濃い緑の光球が、だんだん大きくなって手毬くらいになり、霧のようにぼやけます。
そして、光球には、ランダムに様々な像が映るようになります。

この段階は、「和魂」の記憶が秩序化する過程です。

・第五の鳥居

「和魂」の記憶が秩序化されると、無意識を自在に制御できるようになります。
そして、「和魂」が明鏡のようになり、あらゆるものを写すようになります。
そのため、過去・現在・未来の何でも予知し、透視することができるようになります。

・第六の鳥居

緑の光球が一面に広がり、「奇魂」が光線のようになって、目的地に行き、その光景を持ち帰れるようになります。
そして、「和魂」がそれを客観的に判断できるようになります。

・第七の鳥居

「拝神の鏡」とも表現され、神の御姿を拝し、御声を聞くことができるようになります。

・本殿

全身の「直霊」が目覚めて、天之御中主に達して一体化します。


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