インド・ヴェーダの創造神話 [創造神話と古代神智学]

「ヴェーダ」は-12C頃から様々な時代に書かれたもので、そこには様々な創造神話、創造神が語られます。
原初の宇宙開闢に関する創造神話には次のようなものがあります。
まず、エジプトのプタハ神のような鍛冶的な建築士として世界を創造する「ヴィシュヴァカルマン」や「ブラフマナスパティ」。
次に、原初の水にはらまれた「黄金の胎児ヒラニヤ・ガルバ」から成長する創造神。
そして、解体されて神々や世界を生む「原巨人プルシャ」。
やや時代は下って-9C頃の「ブラフマナ文献」では、黄金の宇宙卵から生まれる創造神「プラジャーパティ」などです。

「ヴェーダ」に登場する神々は数多く、その世代関係ははっきりしません。
ですが、原初の水(海)や深淵に相当する母神は無限の神「アディティ」です。
彼女の子供に当たる神々達は「アーディティア(アーディトア)神群」と呼ばれます。
その代表が、エジプト神話の「アトゥム=ラー」のような原初の創造神に相当すると推測される光神の「ヴァルナ(写真下左)」と「ミトラ」の2神です。
ただ、これらの神々の誕生の物語は不明です。

この2神は対象的なカップルの性質を持っています。
「ヴァルナ」は光の神、天空神の創造神ですが、元来は原初の水に住む「蛇」なのです。
同じ光神でも、「ヴァルナ」の方がより原初的で夜・水の性質を持ち、「ミトラ」が昼・火の性質を持ちます。
「ヴァルナ」は良い創造力(マーヤー)で宇宙を作り、呪力を持ち、エジプトの「マアト女神」に相当する「正義・理法リタ」の守護者で、悪い人々を縛ります。
また、「ヴァルナ」の両目は「太陽神スーリア」と「月神ソーマ=チャンドラ」です。

「ミトラ」は法と契約、友愛の神です。
「ヴァルナ」が他界と関係する恐い存在であるのに対して、「ミトラ」は現世と関係する人間に近い優しい存在です。

また、「ミトラ」の下には、婚礼や給与を司り、死者を守護する祖神の「アリヤマン」がいて、この3神が「アーディティア神群」の代表です。

アーディティア神群らは「アスラ神群(漢字で阿修羅)」とも呼ばれ、やがて次世代の「デーヴァ神群」に主権を奪われ、悪神化していきます。

「デーヴァ神群」は戦争を司る天空神達で、天神「ディアウス」と地神「プリティヴィー」の息子達などです。
その主神は「風神ヴァーユ」と「嵐神インドラ(写真下右)」です。

「ヴァーユ」は棍棒に象徴される荒ぶる暴力を特徴としているのに対して、「インドラ」は弓に象徴されるコントロールされた暴力を特徴としています。
ただ、「ヴァーユ」には「原人プルシャ」の息というような原初神に近い性質もあります。
ヴェーダの後期には「インドラ」が勢力を伸ばして「ヴァーユ」を駆逐してしまいました。
「インドラ」は悪いマーヤーを持つ「悪竜ヴリトラ」を退治します。

他にも「嵐神ルドラ」や「太陽神スーリア」、「火神アグニ」が天界神として有力でした。
太陽神はエジプトと同様、その場所によって様々な名前・神格を持ちます。
昼の太陽は「スーリア」は、昇る太陽は「ヴィヴァスヴァト」、沈む太陽は「サーヴィトリー」と呼ばれます。
後のヒンドゥー教の主神の「ヴィシュヌ」は、本来は「インドラ」を補佐する太陽のエネルギーの神でした。
もう1つの主神「シヴァ」は「ルドラ」や「アグニ」の性質を受け継いています。

生産に関わる豊穣の地界神とされているのが、朝の太陽と関係づけられている双児の「アシュヴィン双神」や「ナサーティア双神」です。
「アシュヴィン双神」は多分、牛と馬をそれぞれ守護する神々だったようです。

また、最後期の「ヴェーダ」では「創造神話」の哲学化が行われます。
そこでは、原初には「有もなく、無もなく」、創造神は「唯一のもの」と呼ばれ、それが「呼吸」を行い、「思考」、「意欲」、そして「男性的能動原理/女性的受動原理」が順に生まれて、その後、神々と宇宙が生み出されます。
これを受けて-6Cの「ウパニシャッド」では、純粋な哲学が生まれます。

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インド・アーリア神話
至高神の静的次元
原初の水
原母アディティ
至高神の核的次元
黄金の胎児ヒラニアガルバ
至高神の創造的次元
原巨人プルシャ
光神ヴァルナ/ミトラ
悪神・原母
 
至高神の副次的次元
意欲マーヤ
正義リタ
天の素材神/地の素材神
 
天神/地神
ディアウス/プリティヴィー
旧主神
風神ヴァーユ
主神
嵐神インドラ
悪神・悪獣
悪竜ヴリトラ

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