カルデア人の神託 [ヘレニズム・ローマ]

ズルワン主義のヘレニズム的形態として、2C後半にトルコで生まれたのが『カルデア人の神託(カルデアン・オラクル)』です。
この書はゾロアスターがミスラから得た知識という形式で、ユリアノスが降神術による啓示によって書きました。
原本自体は失われてしまいましたが、後期の新プラトン主義者によって聖典とされたために、彼らの解説などによってその内容が伝えられています。

その内容はヘレニズム独特の折衷主義的なもので、ズルワン主義の他にプラトン主義、グノーシス主義、ヘルメス主義などの影響を感じさせます。
そして特徴的なのは、降神術/高等魔術に関して体系的に述べた最古の書であることです。

『カルデア人の神託』によれば、至高存在は「父=深淵=始原=知=一者=善」と呼ばれ、これが「父/力/知性」という3つの存在に展開して現れます。
「力」は女性的存在で「父」と「知性」を媒介します。
「知性」は「父=知」に対する第2の知性で、イデアに基づいて世界を形成する創造神(デミウルゴス)です。
これらはぞれぞれズルワン主義の「両性具有のズルワン」/「父ズルワン/アナーヒター/ミスラ」に相当します。

世界は直観的知性による「浄火界」、天球に相当する「アイテール界」、物質的世界である「月下界」の3つから構成されています。
そして、それぞれは「超宇宙的太陽」、「太陽」、「月」によって支配されています。知的諸階層のそれぞれにはその階層を統合する「結合者」がいます。
また、3つの世界のそれぞれにも「秘儀支配者」がいます。
後者は「超宇宙的太陽」、「太陽」、「月」と同じかその霊的実体です。
そして、「天使」、「ダイモン」、「英雄」が神と普通の人間の間に階層をなして存在して、人間を天上に引き上げる働きをします。

また、「イウンクス」なる道具が魔術に重要な働きをします。
これはうなり音を発するコマのようなもので、そのうなり音を変化させることによって、魔術の目的に合った天上の様々な霊的な力に共鳴してそれを働かせるのです。
「イウンクス」はこの地上の道具であると同時に、天上の存在でもあります。
この天上の「イウンクス」はイデアに相当し、神と地上世界を媒介する存在なのです。

『カルデア人の神託』が述べる魔術は主に神像や人間に神を降ろして、聖化したり質問をしたりすること、つまり、降神術です。
その方法論は照応の理論によるもので、特定の神格と同調する動・植・鉱物を利用したり、「イウンクス」同様に神格と同調する波動を発する呪文や神名を発することです。

(カルデアン・オラクルの存在の階層)
父=深淵=一者
 
 
 
知性=デミウルゴス
 
浄火界
超宇宙的太陽
─ 結合者 ─ 
大天使
アイテール界
太陽
─ 結合者 ─ 
天使
月下界
─ 結合者 ─
ダイモン
 
英雄
 
人間
 
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