マニ教 [ヘレニズム・ローマ]

マニ教は、バビロニア生まれのマニが3Cに興した宗教で、ズルワン主義=ミスラ教のヘレニズム・ローマ的な習合的形態です。
マニ教については、姉妹サイト「神話と秘儀」の「マニ教とオフルマズドの犠牲」も参照してください。

「マニ」という言葉もミスラに由来します。
マニ教は、グノーシス主義のイラン的形態とも言われていますが、マニ教は世界を悪神によって創造とされたと考えませんので、この点ではグノーシス主義とは言えません。
ですが、世界が悪魔の死体から作られたという点では、現世否定的で、この点ではグノーシス主義的傾向があるとは言えるでしょう。

また、マニ教にはミトラ教、キリスト教、仏教、グノーシス主義などを取り入てた折衷的な宗教で、神格を固有名詞ではなく普通名詞で表現して世界各地で布教しました。
後の節、章でも触れるように、マニ教はユーラシア的規模で、特に中央アジアから中国まで、東方世界で大きな影響を残しました。

マニ教の神話については、姉妹サイト「神話と秘儀」の「マニ教とオフルマズドの犠牲」をお読みください。
この項ではそれとは別に、神智学的観点から紹介しましょう。

まず、マニ教はズルワン主義やマズダ教とは違って、原初に善悪の2つの原理「偉大な父/闇の王」を立てるので、「絶対的2元論」だと言えます。

ズルワンに相当する光の国の「偉大な父」の回りには、5つのシェキナー(光輝・住居)である「知性/知識/思考/思慮/決心(あるいは柔和/奥義/洞察)」がいます。
これらはゾロアスター教のアムシャ・スプンタの相当する大天使的存在で、これらは光の国の大気を形成しています。そして、光の国の大地は光の5元素である「空気/風/光/水/火」で構成されています。

一方、アーリマンに相当する闇の国の「闇の王」の回りには、5つのアイオーン(悪霊)であり闇の大地を構成するや闇の5元素である「煙/火/風/水/闇(あるいは霜/熱風)」がいます。
その後生まれる宇宙はこの光と闇の5元素の混合体です。
このように、ロゴスやイデアの有無ではなく、元素まですべてを善悪の2つの原理で考える点がマニ教の絶対的2元論の特徴です。

「偉大なる父」は、アナーヒターやソフィアに相当する「生命の母」と、息子でアフラ・マズダに相当する「原人間」を、次に5大元素の大天使に相当する「5人の息子」を生み出します。

「原人間」は「5人の息子」をにして、「闇の王」とその「5人の息子」と戦い、まるで毒を盛るように、自ら彼らに食われます。
つまり、「原人間」やそれから生まれる霊魂は、堕落によるのではなく、自ら悪を克服するために悪の中に身を落としたとする点がマニ教の大きな特徴です。

「偉大なる父」は、「原人間」達を救済する「光の友」、「偉大な建築者」、「生ける霊」を生みます。この3者にはほぼ共に働くので、一体の存在でありミスラに相当すると考えられます。
宇宙は闇の中に残った光を分離するための機械として、悪のアルコーン達の遺体から作られます。
宇宙はゾロアスター教のように悪を閉じ込めて撃退する「牢獄」ではなく、光の「分離器」なのです。太陽と月は分離した光の集積所です。

また、12宮の霊である「12人の処女」は抽象的に「王権/知恵/勝利/確信/廉直/真理/信心/寛容/正直/善行/正義/光」と呼ばれます。
そして、宇宙には10天と8地があります。

次にやはりミスラに相当する「第3の使者」が生み出され、彼が宇宙を働かしま悪魔達の情欲を刺激して光を回収しますが、悪達は光の回収を防ぐために光を人間に集めて欲を植え付けます。
つまり、人間が生殖によって子孫を残すことは、光を奪われないための悪魔の陰謀なのです。
この考え方にも徹底的な現世否定主義的な絶対的2元論があります。

次に「輝くイエス」が人間に対する啓示者として現れます。
彼は、「偉大なる父」からの使者であると同時に、「闇」の中に堕ちた「光」の人格化でもあって、「原人間」の受苦の象徴でもあるのです。
その後に現れたマニ自身は、キリスト教のヨハネ福音書に語られる「救いの霊」、「真理の霊」だと考えました。そして、終末には「光の狩人(大いなる思考)」が最終的な救済者としてやってきます。

(マニ教の神格の展開)
偉大なる父
生命の母/原人間/5人の息子
光の友/偉大なる建築者/生ける霊
第3の使者/12の処女
輝くイエス
真理の霊・救いの霊
光の狩人(大いなる思考)

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