チャクラサンヴァラ・タントラの思想 [中世インド]


「サンヴァラ系タントラ」は多数の聖典群からなる運動体で、「チャクラサンヴァラ・タントラ」(9C)は、その最初の経典です。
「サンヴァラ」とは、「集会の輪が生み出す至福」の意味で、饗宴的性ヨガ行の「ガナチャクラ」を背景とする言葉です。

「チャクラサンヴァラ(勝楽)・タントラ」は、第4段階の密教である「無上(アヌッタラ)ヨガ・タントラ」の、「般若・母(プラジュニャー・ヨーギニー)タントラ」に属する経典です。
「母タントラ」の中でも、晩期に生まれたため、最も体系性が高い経典です。


「チャクラサンヴァラ・タントラ」は下記の神話を語ります。

人々の徳が失われるカリ・ユガの時代になると、シヴァ達が24の聖地を征服し、この世界は堕落した。仏は色究竟天へ赴き、ヘールカとヴァジュラ・ヴァーラーヒーの父母仏に変化し、24組のダーキニー、ダーキン、8人の女尊たちを生んだ。そして、シヴァ達を調伏し、24の聖地を占領した。彼らは色究竟天に戻り、仏に真理を求めた。すると、仏は「チャクラサンヴァラ・タントラ」などのタントラを説いた。

神話にもあるように、主尊はヘールカ(サンヴァラ、チャクラサンヴァラ)で、明妃はヴァジュラ・ヴァーラーヒーです。

マンダラは、37尊(合体尊をそれぞれで数えれば62尊です。
37尊は三十七菩提分法と対応づけられます。

マンダラは下記のような5重の同心円構造で、それぞれが五仏に対応します。
ですから、一応は5部の体系です。

1 大楽輪
2 心輪
3 語輪
4 身輪
5 三昧耶輪

1、3、5は地上に、2は天空に、4は地下に観想します。

1の大楽輪は、主尊と明妃、そしてダーキニーら4人の女尊で構成され、母タントラを特徴づける大楽輪に当たります。
ただ、従来のように女尊は8人ではなく、四隅にはカパーラ(髑髏杯)が配置されるのが特徴です。

2、3、4は身語心に対応しますが、24の聖地とそこに祀られている男女尊が配置されます。
24の聖地は、10に分けられ、十地に対応づけられています。
これは「へーヴァジュラ・タントラ」を継承しています。

聖地では、男女の行者が人間マンダラである「ガナマンダラ」を作って「ガナチャクラ」という性ヨガを含む饗宴的な行を行います。
この「ガナチャクラ」は一晩をかけて行い、天体の動きに合わせて、女性行者が移動をしていきます。

「チャクラサンヴァラ・タントラ」には記載がありませんが、サンヴァラ系タントラのチャクラの数は、「へーヴァジュラ・タントラ」を継承して4輪説でしたが、後に6輪説に発展しました。
4つのチャクラに4つの仏身が対応し、三身に加えて「大楽身」という概念がありますが、これも「へーヴァジュラ・タントラ」から取り入れたようです。

チャクラ
・大楽輪:頭頂:大楽身:ハム :ヘールカ(甘露)
・報輪 :喉 :報身 :オーム
・法輪 :胸 :法身 :フーム
・応輪 :ヘソ:応身 :アム :ヴァーラーヒー(智慧の火)
・清浄輪:眉間 
・秘密輪:性器 

三脈
・アヴァドゥーティー:中央管:二項の止揚
・ララナー     :左管 :般若:精液:月 :16母音
・ラサナー     :右管 :方便:経血:太陽:24子音

脈管はダーキニーと、組織・体液は男尊と対応づけられます。
諸尊は、24ないし、37の身体部分と対応付けられ、詳細な身マンダラとなります。

また、頭頂の心滴から垂れる「甘露」=「菩提心」を、主尊のヘールカと考え、それがダーキニーである脈管の中を巡ると観想します。

「チャンダリーの火」を上昇させるか、頭頂から「甘露」を下す場合にチャクラで体験する「四歓喜」に関しては、「へーヴァジュラ・タントラ」の説を継承しています。

また、1日に人間が呼吸する回数を21600呼吸とし、1日でプラーナが、チャクラを通る120本の全ナーディを循環すると考えました。


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