抱朴子・葛氏道と煉丹法 [中国]

<抱朴子・葛氏道>

葛氏道は、神仙道の書として有名な「抱朴子」を著した葛洪(283-343)らの神仙道の流派です。
この派は、教団組織を作らず、師と弟子の関係の小さな修行グループでした。

この派の開祖とされるのは、呉の左慈(左元放)で、後漢末に、天柱山で神人から金丹の仙経「九丹金液仙経」などを授かったことが始まりです。
口伝を含めて、「仙経」は左慈から葛玄(葛仙公)→鄭陰→葛洪と伝えられました。

葛洪によれば、不死を得て、さらに天に上る仙人になるために必要な仙術は、「金丹法(煉丹術・外丹)」です。

次に重要なのは、「房中術(性行為によって精を取る方法)」、「行気(呼吸法などによって体内に気を留める方法)」、「服薬」の3つです。
その次が、「導引術(体を動かして気を巡らす方法)」、「存思法(神の観想法)」などです。

もともと、葛氏道には宗教的な側面がほとんどありませんでした。
ですが、「金丹法」は時間、費用などの点で困難なため、葛洪の後、「霊宝五符」などの呪符の信仰が強まっていきました。

東晋時代には、「霊宝五篇真文」という呪符が作成され、当時、終末論の流行と共に、この呪符が大流行しました。
これには、五斗米道などの宗教性・呪術性の強い神仙道の影響もあります。
また、この呪符を解説する経であり、元始天尊が太上道君に授けたとする「元始系霊宝経」が作成され、これは天師道の道士達にも影響を与えました。

また、上清派の影響もあって、体内神の「存思」も重視されるようになりました。


<煉丹術>

「煉丹術」は、不老長寿や昇仙のための養生術の一つで、広義では「外丹」と「内丹」を指しますが、狭義には「外丹」のことです。
「外丹」は、非金属を金属にする丹薬を服用する方法で、オリエント、西洋、インドの錬金術と似ていて、交流もあったと思われます。
一方の「内丹」は、体内の気をコントロールする瞑想法です。

古くは、「内丹」は不老長寿を目的とし、「外丹」はさらに昇仙までを目的とするとし、後者の方が優れた方法とされました。
ですが、「外丹」は、完成されず、死者も多数出したため、唐代を限りに衰退しました。

中国最古の煉丹術書は、「周易参同契」だと言われています。
作者は魏伯陽で、煉丹術を、儒教の陰陽五行の哲学と、道教の哲学に基づいて説明しながら、「煉丹術」の重要性を訴えています。
そのため、他の各種の神仙術を否定しています。

基本的な理論は、「陽」である金、鉛と、「陰」である汞(水銀)、丹砂(硫化水銀)を素材にして、不死の神仙となるための「丹」を作るものです。
また、その過程の物質の変性を、色に注目して五行に対応すると考えました。

「抱朴子」では、「金丹」を重視しますが、これは「還丹」と「金液」のことです。

「還丹」は、丹砂を原料にして化学変化させて「丹」にしたもの、「丹」は人を仙人にし、物質を金にする力を持っていると考えました。

丹砂(硫化水銀)は赤い色をしていますが、化学変化の過程で、白(塩化水銀)→黒(酸化水銀)→赤と変化させながら戻すことができるので、「還丹」と表現されるのでしょう。

金が「不変」を本質とするのに対して、水銀はこのように「変化」を本質とし、その過程に死と再生・若返りを感じさせます。
丹砂は赤く血の色でもあり、生命力や復活の象徴でもありました。
また、水銀には防腐作用があるため、不死性を持つと考えられたのでしょう。

ですが、「抱朴子」には「丹」として「還丹」以外に、「丹華」、「神符」、「餌丹」、「錬丹」、「柔丹」、「伏丹」、「寒丹」と、様々な「丹」があるとしています。
仙人になるためには、「還丹」は服用100日が必要ですが、「伏丹」は服用即日で可能です。

一方、「金液」は、金に各種の物質(含水硫化ナトリウム、塩化鉄、塩化ナトリウム、雲母など)を加えて液体にしたものです。
「金液」は服すると即日で仙人になることができ、また、物質を金にすることができるとします。


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