スリ・ユクテスワとパラマハンサ・ヨガナンダの思想 [近・現代インド]


このページでは、スリ・ユクテスワとパラマハンサ・ヨガナンダの宇宙論、修道論、宗教思想についてまとめます。

中でもユクテスワの修道論は、クリヤ・ヨガの理解のベースとなります。


<ユクテスワの宇宙論>

まず、ユクテスワの宇宙論を、その著「聖なる科学」から紹介します。

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この書は、ババジから、ヒンドゥーの聖典と聖書を比較した書を書くようにと、指示されて書いたとされています。
冒頭で、「あらゆる宗教の間には、本質的な一致点があり、種々の信仰が説く心理も、帰するところは一つである」と書いています。
ですが、この書はほとんどバラモン哲学的な宇宙論を説いていて、そのほんの一部に対して、キリスト教との対応付けを行っているだけです。

至高の存在は、「フラフマン(=サット=父なる神)」と「プラクリティ(=チット=全知の知)」と「シャクティ(=アーナンダ=全知の愛)」です。

「プラクリティ」からは「聖霊(=光(クタスタ・チャイタニヤ)=生命)」が生まれ、さらにこれから「プルシャ(=神の子)」が生まれます。

ブラフマンの「サット・チット・アーナンダ」ではなく、「ブラフマン」と「プラクリティ」から生まれた「クタスタ」、「プルシャ」を、キリスト教の三位に対応させているようです。

一方、「シャクティ」からは「4つの観念」、つまり「オーム」、「時間」、「空間」、「宇宙原子=(マーヤー)」が生まれます。

次にこれらから、「チッタ(心=マハット)」が生まれ、それが磁化されて「ブッディ(理性)」と「マナス(感覚意識)」の対の磁極が生まれ、そこに「アハンカーラ(自我意識=ジーヴァ=人の子)」が宿ります。

そして、これらは、「5タットワ(=宇宙電気)」として現れ、これらから「プルシャ」の「コーザル体(根源体)」が作られます。

宇宙電気も極性を持って「3グナ」となり、これらから、「5感覚器官」、「5行動器官」、「5感覚対象」が生まれます。
この15の電気属性と、「マナス」、「ブッディ」の磁極によって、「リンガ・シャリーラ(幽体)」が作られます。

次に、「5感覚対象」から「5大元素」が生まれ、これらから「ストゥーラ・シャリーラ(物質体)」が作られます。

15の電気属性、5大元素、4つの心的要素(チッタ、ブッディ、マナス、アハンカーラ)で24の要素となり、これが聖書の「24人の長老」に当たるとされます。
これらは、「アヴィドヤー(無明)」から作られたものなので、実体のない幻であって、父なる神の観念による遊戯にすぎません。

以上のように、ヴェーダーンタ哲学とサーンキヤ哲学が折衷されていて、有神論的側面が少ないので、ヒンドゥー教というよりバラモン哲学的です。
そして、そこにキリスト教や現代科学の言葉が結び付けられています。


また、このようにして作られた世界は、14の「ブーヴァナ―(創造の次元)」から構成されています。
7つの「ローカ」と7つの「パーターラ」です。

7つの「ローカ」は、次のような階層世界・次元です。

 (ローカ)         (性質) 
・サティヤ・ローカ    :父なる神(知・愛)
・タポ・ローカ      :聖霊(光・生命)
・ジャナ・ローカ     :神の子
・マハー・ローカ     :宇宙原子
・スワー・ローカ(根源界):宇宙磁気
・ブーヴァ・ローカ(幽界):宇宙電気
・ブー・ローカ      :物質

7つの「パーターラ」は、7つの生命中枢(チャクラ)であり、聖書では、「7つの燭台」、「7つの教会」に当たるとされます。
ちなみに、アジニャー・チャクラは延髄にあります。


<ユクテスワの占星学的ユガ論>

ユクテスワは、独自の占星学的な世界観を持っています。

彼によれば、太陽は対になる天体と共に、「ヴィシュナビー」という宇宙の中心を2万4千年周期で回っています。
その軌道は、「ヴィシュナビー」との距離が1万2千年ごとに近くなったり遠くなったりしていて、それに従って、人間の徳性が高まったり、低くなったりします。

一番、徳性の低い時代が「カリ・ユガ」期、次が「ドワパラ・ユガ」期で、現在の時代は、「ドワパラ・ユガ」期に入って少し経ったところなのです。
彼によれば、現在のヒンドゥー暦は正しくありません。

また、4つのユガ期は、最下の4ローカと対応します。

 (ローカ)     (ユガ)
・マハー・ローカ :サティヤ・ユガ
・スワー・ローカ :トレータ・ユガ
・ブーヴァ・ローカ:ドワパラ・ユガ
・ブー・ローカ  :カリ・ユガ 


<ユクテスワの修道論>

ユクステルが語る修道論は、最下世界の「ブー・ローカ」から順次、上昇して最上世界の「サティヤ・ローカ」に至る道程です。

「ブー・ローカ」の物質界で、心の闇にいる者は「シュードラ(隷属する者)」と呼びます。
少し目覚めた者は「クシャトリヤ(苦闘する者)」と呼びます。

そして、心に神から送られた「聖なる愛」が芽生えてくると、サット・グル(聖なるグル)に出会うことができます。
グルを常に思っていると、堅固な求道心が起き、ヤマ(禁戒)・ニヤマ(勧戒)の「入門者」、「真の弟子」となります。
そして、8種の心のゆがみが取り除かれて、大らかな心が現れます。
「ストゥーラ・シャリーラ(物質体)」は、正しい食物・環境によって純化します。

随意神経が休むのが「眠り」であり、不随神経が休むのが「死(大いなる眠り=マハー・ニドラ)」です。
プラーナヤーマは、「大いなる眠り」による再生を引き起こし、活力を補給します。
また、プラティヤハーラは、随意神経のエネルギーを内に振り向けます。

ババジのクリヤ・ヨガにおいては、「オーム」が重視され、「プラナヴァ」とも表現されます。
ユクテスワは、「プラナヴァの瞑想」(ブラフマニダーナ)は、ブラフマンに至る唯一の道であるとも言います。

「プラナヴァ」は河の流れに似ていて、聖音を聴くことは、聖河に浸かって「洗礼」を受けることに等しいとされます。
そして、これは「バクティ・ヨガ」だとも言います。

内なる世界への門(スシュムラドワーラ)に意識を向けることができると、「プラナヴァ」が聴こえるようになります。
「プラナヴァ」の洗礼を受けると、精妙な素材でできている「ブーヴァ・ローカ」に入ることができ、「ヴィブラ(完成に近づいた者)」と呼ばれる階級になります。

この世界の「電気的な体(リンガ・シャリーラ)」は、忍耐(タパス)によって浄化し、7チャクラを通過します。

心が絶えず内なる世界から離れなくなると「スワー・ローカ」に入ります。
この世界に入った者は、「ヴィブラ(完成に近づいた者)」と呼ばれます。

この世界では、あらゆる喜び体験し、創造物(マーヤー)に関するあらゆる知識を得ます。
この世界の「磁気的な体(=心、コーザル体)」は、七色の虹(5タットワ+2磁極からなる)のように見えます。
この体をマントラによって浄化します。

次の「マハー・ローカ」は、神の世界への「門」、「ブラフマランドラ」とも呼ばれます。
この世界に入った者は、「ブラフマナ(霊性を達成した者)」と呼ばれます。
マーヤーは消滅し、聖霊の光や聖なる実体を理解するようになります。
この世界は、4つの観念(=4人のマヌ)の世界です。

次の「ジャナ・ローカ」に入った者は、聖霊によって清められた存在であり、「ジーバンムクタ・サンニャシ=キリスト」と呼ばれます。
聖霊による洗礼を受けると、マーヤーを脱し、神通力を得ることができます。
「人の子(アハンカーラ・自我)」が洗礼を受けて「神の子(プルシャ)」になるのです。

次の「タポ・ローカ」に入った者は、自己を供犠として捧げて、聖霊に溶け込みます。

最後の「サティヤ・ローカ」で、父なる神との一体化することは、「カイヴァリア」と呼ばれます。

 (ローカ)     (位階など)
・サティヤ・ローカ:カイヴァリア(父なる神との一体化)
・タポ・ローカ  :聖霊に溶け入る
・ジャナ・ローカ :サンニャシ=キリスト
・マハー・ローカ :ブラフマナ(霊性を達成した者)
・スワー・ローカ :ヴィブラ(完成に近づいた者)
・ブーヴァ・ローカ:ドヴィシャ(第二の誕生)
・ブー・ローカ  :シュードラ→クシャトリヤ→入門者


<ヨガナンダの思想>

ヨガナンダの思想は、基本的には、ラヒリとユクテスワから継承したものです。
以下、「パラマハンサ・ヨガナンダとの対話」で語った彼の言葉を中心にして、彼の思想を紹介します。

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彼の思想のキーワードであり、組織名にも使われている「セルフ・リアライゼーション」とは、「真我の覚醒」のことです。

また、サマディの種類について、「サヴィカルパ・サマディ」は、意識が無限なるものと融合する状態であり、「ニルヴィカルパ・サマディ」は、この世界で働いたり、話したり、動き回っていても、神なる覚醒を維持することができる状態である、という解釈をしています。

ヨガナンダは、「SRF」とその教えについては、次のように書いています。

「SRFは、クリシュナやイエス・キリストの原始教会によって教えられてきた原初の教え、ヨガの科学を、この世界に復活させるため、神により使われたのです」
「これは永遠なる真理の、新しい表現なのです」

ヨガナンダは、しばしばキリスト教について言及したり、聖書から引用を行いました。
彼にとっては、神の子として、クリシュナ=キリストです。
また、「キリスト意識」について、それが万物の内に偏在する聖なる意識であるとし、実践的には眉間のチャクラに感じられるといいます。

ちなみに、クリヤ・ヨガでは眉間への集中を重視します。
ここは上述した「クタスタ」の場であり、集中によって光を霊視します。

ヨガナンダは、神との関係については、情熱的なものであって良いと考えていました。

「神との付き合いは儀礼的であってはなりません。神と遊んでください。もしそうしたければ、からかいなさい。もしそうしたいなら、神をなじってもよいのです。――もちろん、いつも愛を感じながら」
「夜中に床を転げ回り、神に現れてくれるように願い、泣き叫びなさい。人は神を求めて恋いこがれなければなりません。そうでなければ神は決して姿を現すことはありません」

また、グルとの関係については、その必要性、特別性について説きました。
洗礼者ヨハネとイエスの関係もグルと弟子の関係だと言います。

「グルとの絆は、一度確立されるなら、それは今生にとどまりません。…グルとは神の叡智への道路です。神が真のグルなのです」

また、ハタ・ヨガ的な生理学については、次のように説きました。

「エゴは延髄に集中しており…脊髄は無限なるものへの高速道路です。あなたの身体は神の神殿です」
「善き想念を抱く時はいつも、クンダリニーが上昇を始めます」

また、「あるヨギの自叙伝」では、プラーナヤーマなどのハタ・ヨガ的な方法の効果について、血液中に酸素を供給し、その余分が生命エネルギーに変換されると書いています。
そして、「魂を肉体に縛り付けている呼吸という絆を解き放つことによって、ヨギの肉体寿命を伸ばしたり、意識を無限に拡大することを可能にする」のです。

また、「真のヨギは…心を常に脊髄中枢の超意識のレベルに置いて、神の意図されたとおりの人間としてこの世を生きている」のです。


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