大本の宇宙生成神話 [日本]


王仁三郎が書いた大本の宇宙発生論(天地創造神話)を3種、紹介します。
「大本略儀」、「天祥地瑞」の冒頭、「霊界物語」の冒頭の宇宙生成論です。

「大本略儀」のそれは、古事記の霊学的に解釈といった感じのものです。

「天祥地瑞」の冒頭のそれは、天之御中主神以前(造化三神)の「幽の幽」の段階の天界の生成論で、「富士文献」の言霊学的解釈とされます。

「霊界物語」の冒頭のそれは、その後の話で、「(大)国常立尊」が地上の神政を始めるまでの話です。

これらは、全体としての特徴をまとめれば、大本の二教祖の霊統とその統合を基本テーマとして、古事記を霊学、言霊学によって解釈、拡張したものだと言えるでしょう。


<大本略儀の宇宙生成神話>

まず、大正5年に出口瑞月の口述という形で発表された「大本略儀」の宇宙生成論を紹介します。
ここには、まとまった形で、王仁三郎の思想が表現されています。
「霊界物語」とは違って、基本的には古事記に出てくる神々を、霊学的に解釈したものです。


まず、原初の存在として、「天之御中主神」がいます。
この神は、無限絶対、無始無終であり、「大元霊」、「大国常立尊」とも表現されます。

「大元」という表現は、伊勢神道や吉田神道以来のものです。

また、「天之御中主神」は、言霊としては「ス」です。
言霊学では、音声は言霊であり、神です。

原初の言霊を「ス」とするのは、中村孝道のアイディアに始まり、大石凝真素美が体系化しました。

「天之御中主神」は、「霊・力・体」の三元を配分し、自身と一体である宇宙万有を創造するので、「全一大祖神」とも表現されます。
宇宙も無限絶対、無始無終で、宇宙に発生するすべては、「小天之御中主神」です。

「天之御中主神」と宇宙の関係は、「放てば万有であるが、これを巻き収むれば、天之御中主神に帰一する」のです。
つまり、流出論的宇宙論、神観です。

ですが、「天之御中主」は、活動を開始しているので、静的状態に逆行することはありません。

「天之御中主神」の創造は次の4段階で行われます。

1 幽の幽:根本造化の経営:伊邪那岐、伊邪那美より前、神世六代まで
2 幽の顕:天の神界の経営:伊邪那岐、伊邪那美、三貴神など
3 顕の幽:地の神界の経営:天孫降臨から神武天皇より前
4 顕の顕:人間界の経営 :神武天皇以降

ですが、いずれの段階の創造も、未完成なのです。
ですから、人間の使命は、「天之御中主」が創造する天地経綸に従うことです。


「幽の幽」の段階では、まず、「天之御中主」は、相対的二元として、「霊」と「体」を生み出します。
これは「陽」と「陰」でもあり、「火」と「水」でもあります。

そして、神としては、「高皇産霊神」と「神皇産霊神」です。
この両神の活動によって時空が生まれます。

「天之御中主」は、活動の初めに、「陽」を主として、「陰」を従としました。
「大本霊学」では、これを「霊主体従」と表現します。

また、二元は結びつて「力」となります。

・霊(チ・ヒ):火:陽:高皇産霊神:父:左
・体(カラ) :水:陰:神皇産霊神:母:右
・力(チカラ):霊・体の結合で発生

「幽の幽」の段階の神で、地の創造に関わるのは、「国常立尊」と「豊雲野神」で、次のような特徴を持ちます。

・国常立尊:霊系:縦に大地の修理固定、根本の働きを司る
・豊雲野神:体系:横に天地の修理固定、気候風土など特色の働きを司る

大本によれば、今起こりつつある「立替え立直し」は、この二神が働きによります。
大本には、この二神は「艮の金神(出口ナオ)」、「坤の金神(出口王仁三郎)」として現れました。

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*王仁三郎が描いた国常立尊と豊雲野神


「幽の幽」の段階は、宇宙の内部の動きであって、現象として現れません。
ですが、「幽の顕」の段階の働きは、宇宙に現象として、天地の出現などとして現れます。
この世界は「天の神界」と呼ばれます。

「幽の顕」の経綸を主として担当するのは、体系では「伊邪那美神」、霊系では「伊邪那岐神」です。
言霊では、それぞれ「ア」と「ウ」です。

・伊邪那美大神:体系:ア
・伊邪那岐大神:霊系:ウ

そして、この二大基礎音から五大母音となり、五十声音となり、七十五声音となり、無量無辺の音声が鳴り響き、天津神々が生まれ、森羅万象が生まれました。

この二神から生まれた三貴神は、以下のような性質を持ちます。

・天照大御神:霊系:左:火:天の神界(高天原、至大天球)を主宰
・月読命  :体系:右:水:夜の食国を主宰
・須佐之男尊:両系:中  :地の神界(海原、地球)を主宰

また、この段階での宇宙における霊魂の働きは、「体」から言えば「天・火・水・地」の「四大」となり、「用」から言えば「奇・荒・和・幸」の「四魂」となります。

・用:奇・荒・和・幸の四魂
・体:天・火・水・地の四大

それぞれは次のように対応します。

・奇魂:天:霊の霊
・荒魂:火:霊の体:太陽
・和魂:水:体の霊:太陰
・幸魂:地:体の体


「顕の幽」の段階は、「地の神界」とも表現され、国津神はここに属します。

大地は宇宙の中心にあって、まず、日月星辰が分離した後で、最後に形成されました。
大地には、天津神の分霊が国津神の霊魂として宿っていて、大地の形成は国津神の発生と同時の出来事です。

大地を主宰する「須佐之男尊」は、高天原を主宰する霊系の「天照大御神」との関係では、体系となります。
そして、「須佐之男尊」は、「瑞の御霊」を持つ「変性女神」であり、「天照大御神」は、「厳の御霊」の御霊を持つ「変性男神」です。

「地の神界」の経綸は、この両神の誓約(うけい)によって生まれました。
これによって生まれた三女神は「変性女子」の御霊=「瑞の御霊」を持ち、五男神は「変性男子」の御霊=「厳の御霊」を持ちます。

・須佐之男尊→三女神:変性女子の御霊=瑞の御霊
・天照大御神→五男神:変性男子の御霊=厳の御霊

この両者を統一して完全なものになるのが、「伊都能売の御霊」です。
「伊都能売神」は、古事記に名前のみ登場する神です。
王仁三郎は、ナオが亡くなった後に、自分に「伊都能売」の御霊が降りたとしています。


以上、「須佐之男尊」は、三貴神としては統合の立場で生まれていますが、「天照大御神」と対となった後の統合の立場にあるのは、「伊都能売神」とされます。


<天祥地瑞の言霊宇宙生成神話>

1921(大正10)年に、王仁三郎が口頭著述を始めた「霊界物語」は、81巻まであり、12巻ごとにまとめられてタイトルが付けられています。
73巻以降は「天祥地瑞」と呼ばれ、72巻までとは独立した作品です。
72巻までの「霊界物語」が過去の現界の物語であるのに対して、「天祥地瑞」は大過去の霊国の物語とされます。

「霊界物語」は全体で、120巻を予定していたとされます。
ですが、72巻までの「霊界物語」、「天祥地瑞」ともに、物語が中途半端に終わっていて、未完のようです。

「天祥地瑞」は、天之御中主神以前(造化三神)の「幽の幽」の世界で、「富士文献(宮下文献)」の言霊解釈とされます。
「富士文献」では、天之御中主神以前の7代の神を語り、それを「天の世」とします。
富士の高山や噴火を表現する神々です。
そして、天之御中主神以降が「天之御中の世」とされます。

ですが、「天祥地瑞」には多数の神々が登場しますが、ほとんどは聞いたことのない名前の神々で、「富士文献」の7代の神はごく一部しか含まれません。

ここでは、「天祥地瑞」の冒頭の「紫微天界」の生成に関する部分を紹介します。


原初に、大虚空に極微なる一点「ゝ(ほち)」が顕れ、これが霊気を産出し、円形を作ります。
円形は微細な気を放射して円形の圏を描いて元の円形を包み「⦿(ス)」の形になりました。

原初の音を「ス」とするのは、中村孝道のアイディアをもとにした大石凝真素美の説、それを「ゝ(ほち)」と「○」で表現するのは、山口志道に由来するものです。

言霊学では、音声は言霊であり、神です。

この「ス」の言霊の働きを、「天之峯火夫の神」、「大国常立神」、「主(ス)の大神」と呼びます。
「天之峯火夫」は、「富士文献」の原初神です。
「ス」の言霊宇宙は、極微の神霊分子が動きまわっている状態です。

この「ス」が限りなく膨張して「ウ」=「宇迦須美の神」となりました。
「ウ」は「体」を生み出す根元です。

ちなみに「ウ」を原初の言霊としたのは平田篤胤です。

「ウ」が上昇して「ア」=「天津瑞穂の神」を生みました。
また、「ウ」が下降して「オ」=「大津瑞穂の神」を生みました。
また、「ウ」は神霊の元子と物質の原質を生みました。

そして、「天之峯火夫の神(ス)」と「宇迦須美の神(ウ)」の働きで、大虚空に「天津日鉾の神」が出現しました。
この神は、やがて言霊の原動力となって、75声の神を生んで、至大天球を創造します。

「天津瑞穂の神(ア)」と「大津瑞穂の神(オ)」が結びついて、「タ」の言霊である「高鉾の神」と、「カ」の言霊である「神鉾の神」を生みました。

この両神は左遷・右旋して円形を作りましたが、これが「マ」の言霊である「天津真言の神」です。

「タカアマ」の言霊が、際限なく虚空に拡がって「ハ」の言霊である「速言男の神」が生まれました。

「速言男の神(ハ)」が右に左に廻って螺線形をなして「ラ」の言霊を生みました。
高天原の「六言霊(タカアマハラ)」の活動によって、大宇宙は形成され、霊子の根元と物質の根元、天地の基礎が作られました。

ちなみに、「タカ・アマ・ハラ」という言霊を原初の言霊としたのは吉田兼倶、「タカマガハラ」という6声の言霊で至大天球(高天原)ができるとしたのは大石凝真素美です。

1 ス=天之峯火夫の神(大国常立神、主の大神)
2 ウ=宇迦須美の神
3 原動力=天津日鉾の神
4 ア=天津瑞穂の神
5 オ=大津瑞穂の神
6 タ=高鉾の神
7 カ=神鉾の神
8 マ=天津真言の神
9 ハ=速言男の神
10 タカアマハラ=高天原


次に、「六言霊」は鳴り続けて、「火」、「水」を発し、光を放ち、霊線を放ち、徐々に5層(紫微圏(天極紫微宮界)、蒼明圏、照明圏、水明圏、成生圏)を形成しました。

次に、「主の大神」は、「高鉾の神」、「神鉾の神」に高天原を形成させました。
そして、諸神は「紫微圏」層に住みました。

次に、「タカアマハラ」の言霊から生まれた「天之高火男の神」が「天之高地火の神」と共に、「タカ」の言霊によって天界の諸神を生み、「紫微宮」を作りました。

この両神は「富士文献」に出てくる神です。

「紫微圏」の霊界を「天極紫微宮界」と言い、「タカ」の言霊が鳴り輝き、75声の神々を生みました。


また、「速言男の神(ハ)」は、霊・力・体の「三元」で、七神を祀る大宮を作り、「大太陽」を生みました。

大宮が完成すると、「速言男の神(ハ)」は、「一二三四五六七八九十百千万(ひふみよいむなやここのたりももちよづ)」と祝歌を謡いました。

また、左を守る「言幸比古の神」は、「アオウエイ、カコクケキ…パポプペピ」と言霊を縦に宣り上げました。
そして、右を守る「言幸比女の神」は、「アカサタナハマヤラワガザダバパ…オコソトノホモヨロヲゴゾドボポ」と言霊を横に宣り上げました。

また、宮に仕える「日高見の神」は、祝言の歌を宣り奉りました。
「言幸比女の神」も言霊の幸を歌いました。


次に、「天の道立の神」は、「ウ」の言霊から生まれて、四柱の神に昼と夜を分かち守らせ、神業に活躍し、諸神を安住させました。
ですが、妖邪が発生したので、天の数歌、大祝詞を奏上してこれを消しました。

「天の道立の神」が大幣を振ると、「太元顕津男の神」がやって来ました。
「太元顕津男の神」は、「ア」の言霊から生まれて、西南(坤)の空を修理固定した神です。

「天の道立の神」は、「太元顕津男の神」に、高地秀の峯に降りて、神生み(国魂の神)、国生みを命じられました。

「太元顕津男の神」は、高地秀の峯で言霊を奏上し、大太陰(天界の月)を生み、「高野比女の神」を妻として、高地秀の宮に住みました。

「天の道立の神」は紫天界の西の宮の神司として、神人の教化に専念しました。
一方の「太元顕津男の神」は東の国なる高地秀の宮に神司として、霊界における霊魂、物質両面の守護を行いました。
そして、「太元顕津男の神」は、「みろく(至仁至愛)の神」となって大太陰界に鎮まりました。

・天の道立の神 :厳の御霊:ウ:大太陽
・太元顕津男の神:瑞の御霊:ア:大太陰:みろくの神
・伊都能売神  :厳と瑞の御霊

そして、厳・水の二つの御霊を合わせ持ち、「みろく神政」を樹立する神が、「伊都能売神」です。
現在は、とうとう「伊都能売神」が地球に現身をもって現れて、神業を行う世になりました。


この後は、「太元顕津男の神」の神生み、国生みの旅の物語となります。
「太元顕津男の神」は、八十柱の比女神を授けられて、紫微天界を旅して、比女神と出会い、御子の国魂神を生み、言霊を奏上して国土を修理固成していきます。


<霊界物語の宇宙生成神話>

「霊界物語」は、王仁三郎が明治31年に高熊山の霊的体験で見た幽界・神界の物語とされます。
王仁三郎が主人公で、木花咲耶姫の使者・松岡芙蓉仙人に導かれて、幽界と神界の旅に出るところから始まります。

「霊界物語」は、世界を舞台にした太古の物語で、中心テーマは、国祖とされる「国常立尊」の隠退と復帰、「素戔嗚尊」の贖いと救世、そして、宣伝師の伝道と成長の物語です。

それらは悪との戦いの物語でもありますが、原則として、正神たちは、武力を否定し、「言向け和す」ことによって悪の改心を目指します。

ですが、「すべて宇宙の一切は…善悪一如にして、絶対の善もなければ、絶対の悪もない」と最初に語られるように、勧善懲悪を否定しています。

以下、1巻20章から語られる、宇宙生成の部分を紹介します。


混沌の中に、球体の凝塊が顕れ、目の届かない広がりに至りました。

その球形の真ん中に金色の円柱が立ち上がって左遷し、星々を飛び散らせました。
そして、「金色の竜体」になり、多数の竜体を生み、竜体が通ったところに山脈、海ができました。
「金色の竜体」は、「大国常立尊」と呼ばれます。

一方、海の中から銀色の円柱が立ち上がって右旋し、種々の種物を飛び散らせました。
そして、「銀色の竜体」になりました。
「銀色の竜体」は、「坤の金神(豊雲野神、豊国姫命)」と呼ばれます。

次に、「金色の竜体」の口から太陽、「銀色の竜体」の口から太陰が生まれました。
太陰が地上の水を吸い上げ、地が固まると、二つの竜体は人の形の霊体になりました。

太陽の世界では伊邪那岐命が「撞の大神(天照大御神)」を招いて天上の主宰神にしました。

次に、「白色の竜体」が、一番力のある神の「素戔嗚大神」になりました。
また、この神から白色の光が放たれて「月夜見尊」となって月界の主宰神になりました。

・金色の竜体:大国常立尊(艮の金神)→太陽
・銀色の竜体:豊雲野神 (坤の金神)→太陰
・白色の竜体:素戔嗚大神      →月夜見尊


次に、「大国常立命」は、地上霊界の主宰神「国常立命(国祖、国治立命)」となり、「地の高天原(聖地エルサレム)」で神政の指揮を執りました。

そして、十二の神々を生み、動・植・鉱物を形作って、地上を実りある世界にしました。
また、「日の大神」と「月の大神」の霊魂を授与して、肉体は「国常立尊」の主宰として、人間を作りました。

一方では、天地間に残滓のように残っていた「邪気」は、凝って悪竜、悪蛇、悪狐といった「邪霊・邪鬼」となり、神々に憑依し、世を混乱させようと企てました。

「国祖」は、厳格な「天の律法」を制定しました。

また、太陽の陽気と太陰の陰気を吸って、「稚姫君命(稚桜姫命)」を生み、聖地エルサレムにある「竜宮城」で宰相として神政を担いました。
「稚姫君命」は、生まれ変わって出口ナオになったとされる神です。

そして、地上現界の主宰は、「須佐之男命」に委任しました。
「素戔嗚大神」の地上現界における姿が「須佐之男命」です。

   (霊界の主祭神)   (現界の主祭神)
太陽:伊邪那岐(日の大神):天照大御神(撞きの大神)
太陰:伊邪那美(月の大神):月夜見神
地球:国常立尊      :須佐之男尊



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