宮地神仙道 [日本]

宮地常盤・水位の親子に始まる宮地神仙道は、日本の代表的な神仙道です。
平田篤胤の影響を受けつつ、神道と道教を習合させた特徴を持っています。

神道系では珍しく、憑霊型ではなく脱魂型の宗教・神秘主義思想を形成しています。

宮地神仙道の基本的な歴史などについては「神仙道の潮流」をお読みください。


<神仙界>

水位によれば、新仙界には四つの神都(神仙界)があります。

1 北極紫微宮(高天原・北天神界)
2 日界(太陽神界)
3 神集岳神界(高級神仙界)
4 万霊岳神界

「北極紫微宮」は、北辰の中にあって、電光と同じような光だけがある世界です。
天之御中主が主宰し、正月には全幽界の神々(風神、五行神、豊受、大山積、須佐之男、少彦名など)が、紫蘭大樞宮號真光門の前庭に集まります。

また、「北極紫微宮」の向かいには、伊邪那岐大神が主宰する「南極蘭殿(南天神界)」があるのですが、これは人間には極秘の世界です。

「日界」は、(おそらく)天照大神が主宰する世界で、ここには人間はほとんど入れませんが、まれに入れる者もいます。
伊勢神宮はこの神界を祀ります。

「神集岳神界」は、には大国主の宮殿があって、出雲神社はこの神界を祀ります。少名彦那大神が統率し、死者を裁く退妖館があります。
大神の下には72人の大司命神がいて、その下には39人の国津司命神が、さらにその下には8700人の小司命神(産土神)がいます。
契沖、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤らが記式官三百神として働いています。

「万霊岳神界」は、少名彦那大神が主宰する世界で、ここでは全幽界の運営を決める大評定が行われ、その決定は順に上界に上げられ決裁されます。
各地の神社はこの神界を祀ります。
ここにいる高位の者は「僧正」と呼ばれますが、これは仏教とは関係なく、地仙に当たります。
日本武尊、萬里小路藤房、楠木正成、和気清麿、豊臣秀吉が右察官中として働いています。

そして、四都とは別に、「月界」があって、ここは産土神社が関係します。

四都の下には、「現界」、「山人界」、「仏仙界」があります。
さらにその下に、「仏界」、「天狗界」、「竜神界」、「釈魔界」、「仏魔界」があります。
そして、一番下に「黄泉」があります。

ですがこれらは幽界の一部であって、弟子によれば、全部で72の神界と78の霊境があるそうです。

「現界」は様々な霊区と重なり、様々な霊界が取り巻いていいます。
そして、人間は死後に、50日後、小司命神(産土神)に迎えられ、個々にふさわしい幽界に行きます。
多くは冥符に至りますが、優れた魂は「太陽神界」に、罪人は「月界」に行きます。

「天狗界」は神武正邪善悪の混じった世界で、神武天皇の時に開かれ、雑多な霊が集まっています。
神界とつながる霊区もあれば魔界とつながる霊区もあります。
また、「山人界」は「天狗界」の高級な霊が集まってできた霊区で、「現界」と連続しています。
「天狗界」は、素戔嗚の系統で、天南坊(崇徳上皇)ら八天狗がトップにいます。

「魔界」は、造物大女王、無底太陰女王、積陰月霊大王ら悪魔の12の棟梁が率いています。
これらの悪魔は、空中を往来していることが多いのです。

他にも、「海宮神仙界」がいくつかあって、龍飛太上仙君(龍飛大神)や龍徳太上仙君(龍徳大神)が主宰する神仙界や、海津見仙境などがあります。

また、ヨーロッパ系の神仙界もあって、「フラテリー」はゲートルこと八意思兼神と、サンダマリこと須佐之男尊が主宰します。
この須佐之男尊が西洋でも活躍しているという考えは、出口王仁三郎に影響を与えたかもしれません。


<神仙界への飛翔>

宮地水位の体験によれば、紫微宮や神集岳へは、上空高くに上ってから、2時間ほど下って着きます。

大空には3つの道があります。
神々が通る第一上道、神の使者が通る第二中道、天狗らの通る第三下道です。

神仙界への行き方には、様々な方法があります。

まず、脱魂して行く場合と、肉体で行く場合があります。

神仙に伴われて脱魂して行く場合、上天秘文と12字を唱えて風神を呼び、手印を組んで息を吹きかけて行きます。

天狗に伴われて肉体で行く場合は、大きな鷲の背に乗って行く時と、鷹には乗らずに圑扇を持って飛ぶ僧正に先導されて行く場合があります。

神仙に伴われて、山を登っていると、いつのまにか神界に入っていることがあります。

いずれの場合も、途中の道はほとんど分からないようです。

仙界は、物質界では普通の山でも、脱魂して行けば仙界に見えます。
同様に、低い山でも百里の高い山に見えたり、小さい祠も大きな宮殿に見えたりするのです。


<パンテオンと神仙の位階>

宮地神仙道は、平田篤胤を受けて、道教は大国主、少名彦那が説いたものであると考えます。
そして、日本の神と道教の神を次のように対応づけました。

・伊邪那岐大神=三天太上大道君
・東王父   =大国主
・西王母   =須勢理姫神
・青真小童大君=少名彦那大神
・暘谷神仙王 =事代主神

水位の弟子によれば、中国の神仙道は大国主と少名彦那命の系統の神仙達が指導しました。

水位によれば、神仙は17品からなります。

上位9品は、生まれながらの神真、自然の真胎であり、上から、「九天真王」、「三天真王」、「太上真仙」、「右林官大司命」、「右林官小司命」、「紫微官大理命」、「紫微官小理命」、「退妖官司籍命」、「飛天真人」となります。

下位8品は、人間として生まれて仙人となった者で、上から、「霊仙」、「真人」、「霊人」、「飛仙」、「仙全」、「道真」、「大霊寿真」、「小霊寿真」となります。


<五岳真形図>

中国道教の聖地に五岳があります。
中岳と四方の四岳で構成され、五岳には五行が配当されます。

水位は、これを記紀などの日本の天地開闢神話と結びつけて、天之御柱・国中之御柱が、中岳の大崑崙神界であるとしました。

そして、五岳の神を、五行の日本の神として次のように対応づけました。

・中岳:土:埴安姫
・東岳:木:木々能智
・西岳:金:金山姫
・南岳:火:迦具土
・北岳:水:水波能女

水位が神仙界で書写を許されたとする「五岳真形図」は、三天太上道君が虚空より俯瞰して五岳を書き写させて、五帝に授与し、原図は道君の七宝之玄台に秘したとされるものです。

「五岳真形図」は、元気の発動と五気の働きを促すものです。
この図を瞑想することで、五岳の精気を五行神の魂魄・徳を体に働かせて、「霊胎」を作る助けとなります。

0F35AC37-D41B-4ECF-A0FC-9173AA46CF3B.jpeg


<霊魂観>

宮地神仙道の基本的な霊魂観は次のようなものです。

人間には、「魂」、「魄」の2魂があり、下のような性質があります。

魂:陽:日:烏:肝:火
魄:陰:月:兎:膸:水

胎児は、陽体である父の腎液(陰物)と、陰体である母の血液(陽物)という陰陽二気が交わって胎を結びます。

そして、胎児の出生と同時に「神識」が入ります。
「神識」は、宇宙元気の太霊たる天神の分神です。

「魂魄」は、「七魂(思、怨、悲、悪、善、欲、念)」、「七魄(貪、婬、偸、妄想、食、煩)」に別れます。

人の死後には、「七魂」は滅しませんが、「七魄」は滅します。
また、「魂」の一分は日に、魄の一分は「月」に帰ります。

また、仙道修行によって作る不死の霊体を作る「玄胎凝結」の基になるものを「感神(感)」と呼びます。
これは、天の玄一から来る精妙な霊物で、「識神」使たる霊物、気によって内外に出入りするもの、体外で霊魂が宿るところです。


<鎮魂法、感念法、使魂法>

水位や宮地神仙道では、鎮魂法について様々に述べていますが、その本質を「オホタマフリ」=「ミタマノフユ」ともしています。
これは玄学的には「真一」と一体化することであり、幽冥から「産霊の力」(天地創造の力)を招くことであるとします。

また、四代の清水宗徳によれば、宮地神仙道では、念が「産霊の力」を引き起こすと考えます。

そして、森羅万象宇宙一切を天之御中主神の「想念」に他ならないと考えます。

「想念」を行法とすれば、仏教では「観想」になりますが、これを「感念」とか「霊感」表現します。
「感念」は、「感神」をコントロールし、「霊胎凝結」に使います。


また、「感念」によって脱魂する修行も重視します。
この脱魂法を「使魂法」と呼びます。


宮地神仙道には、12の「霊感術」、「使魂法」があります。

・童子法
深夜に東西南北に向かってそれぞれで神々の名前などを唱え、魂を北極星に至らせる。

・想満法
夕方に日が沈む西北に向かい、崑崙山を想い、仙人を見る。

・長全感一法
毎夜、北極星に向かって、皇天上帝が体に降りると唱えて、左右の目から三寸の美男と美女を出して頭上で遊ばせ、その後、一人に合体させて体に戻す。

・感根法
夜に、四方に四岳の図を安置し、中岳の図を持ってその中に入り、混沌を見て、元気を知る。
そして、五岳真形図を天井に張ってこれを見て、五岳の神を観想し、五元を思い、天井に煙のような者の顔を見る。

・真壽法
三寸二歩の箱を作って夜に庭に出て、宇宙の遊魂をこれに入れて、その箱を枕の中に入れる。
神仙の名を呼んで姿を観想すると、神仙が来て使魂脱出の妙法を授ける。

・空玄想感法
毎夕、「皆な空玄真一に基づき、真一に出で真一に帰す…真一は我が明堂にあり…」という「空玄微妙経」の咒を読み、神仙の降来を思い、神仙に従って天に昇降する

・通谷法
海水を器の中に注ぎ、さらに、黒赤2色の水を注ぎ、大海の中の九原大人の宮殿を観想し、その仙界に至る。

・鏡感法
毎夜、鏡に向かい、魂を鏡の中に入れる。そして、四色の四童子が現れ、その後、一体に合体する。

・感圍秘法
現実の特定の人物と対座して、左右の童子を呼び、その人の腹の中を観想して、その人の心の善悪を知る。

・使歩法
夜に部屋の中で座して、魂を脱して遠方を歩む。

・合一法
夜半に北に向かって聖句を唱えて。その後、四方の気を吸引して、四方を観想する。
そして、天井の上から天女が降臨するのを見る。

・自成法
各種の養生法、導引法を行い、元気を守り、五岳真形図と天一を観想する。


<霊胎凝結法>

水位の「霊胎凝結法口伝」には、不死の霊的な身体となる「霊胎(真胎)」を作る方法が説かれています。
「霊胎」は、天之御中主神の分霊と「玄素」、そして、自己の霊魂を結合して作ります。

水位によれば、天地に先立つ元気は「真一」、「神識」と呼ばれ、天の「真一」は「元一」と呼ばれます。
そして、これが胎児に、出生時に入ります。
これは、天之御中主神の分霊とも表現されます。

まず、「霊胎凝結法」の前段階として、自分の霊魂を中府に安養する「養気法」、太一真君を拝して尊ぶ、七魄を消して元気を充実させる、などがあります。

ちなみに、道教や陰陽道で言う、身体内に憑く悪鬼の類である三尸・九蟲・七鬼を排除する方法には、庚申の日に徹夜する方法がありますが、宮地神仙道には、霊符によって十二識神を使役する「六甲霊飛法」があります。

本行の最初に、「五岳真形図」を凝視して、五気の働きを活性化させます。

次に、自分の前方に心を集中していると、変化する色・形が見えてきます。
やがて、その色が五色の五童子の形になり、合体します。

この時、天地に先立つ存在を感念(観想)します。

次に、その像の場所に、空中に遍満する「元一」から生まれた「元素」を凝結し、それを大きくしていきます。
すると、そこに自分の霊魂と、虚空より来る「真一」(分霊)がそこに合一します。
これが「霊胎」になります。

「霊胎」が完成すると、自在に神仙界に入ることができます。
また、いずれは肉体を消失させることができます。

中国の仙道の内丹法では、自分の身体の内部に「霊胎」を作って、それを成長させてから外に出します。

*姉妹サイトの「南宗・北宗の内丹法」を参照

ですから、身体の外部に「霊胎」を作る水位の方法は独特なものです。
水位は、道教の書の方法は間違っていると書いています。

水位の方法は、むしろ、西洋魔術の霊体離脱の方法に類似しています。


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。